考察のテーマ:調査対象施設入所者のご家族の関心事とその特性
                                                                                                     M964 松川 美紀
 
 

   家族用質問票は、基本属性、施設利用者・施設に関する質問、介護保険に関して、地域との交流、という内容に分かれている。施設利用者の施設利用者・施設に関する質問では、サービスの質、サービスに関する満足度が問われている。介護保険導入により、施設と利用者による契約が結ばれ、利用者はサービスや施設を選ぶことができるようになるという。サービスの質、サービスにより施設を選ぶなどといわれているが、面接調査を行った印象では、質問票にあるようなサービスそのものの質に関する事柄には、特別に関心を寄せている方は少なかったように思える。むしろ、介護保険導入に際した家族の現実的な関心事は「経済的な負担」にあるようだと感じた。そこで、ご家族用調査表の自由記述(W―4)をコード化することで、@どれくらいの割合で「経済的不安」が述べられているのか、A経済的不安を述べる人々には何らかの特徴があるのかを考察し、ご家族の関心事からこの制度の問題点を明らかにしたい。
   このような問題意識から、本稿ではまず、Tでは家族用調査記述問題に関する説明を行い、U.記述問題のコーディング結果を示し、V.この結果を踏まえた考察を行う。

 

T.家族用調査記述問題について

 家族用調査全体の概要は次のようである。

   TからVの質問項目においては調査に最低限必要な質問項目が盛り込まれているが、このような質問項目では対応できない多様な個別の回答というものが考えられる。自由記述問題Wの目的は、調査対象者が介護保険導入に際してどのような心配事、不安、意見を持っているのかを自由に回答していただき、TからVの質問事項に対する回答からは見えてこない調査対象者の意見を明らかにすることである。

   調査対象者には設問の最後に、「公的介護保険が始まりますが、利用されている施設に関しての心配ごとや、意見などございましたらご自由にお書き下さい。」という質問により自由回答を行ってもらった。回答の結果は、以下のようなコードに分類した。数字はコード番号で、()内は回答数である。

 

自由記述W―4 コーディングの内容 ()内は回答数

    

@設備に関する要望(6)

A入所者へのプログラム、サービスに関する要望(11)       

B家族へのサービスに関する要望(4

C金銭管理関する要望(2

D第三者的機関、相談機関、ネットワークに関する要望(3)     

E設備に関する不満(3

F入所者へのプログラム、サービスに関する不満(1) 

G経済・金銭的問題不安(13

H制度の内容(分からない、も含む)に関する不安(13

I介護サービスの質に関する不安(9

J介護認定に関するもの(11

K現状に満足(9

Lサービスの幅が広がる(2

Mその他(10

自由記述回答者数:53

自由記述回答数(延べ):97

自由記述回答者の特性(N53

回答頻度の多かったG、H、Iについてその内容は以下のようであった

・認定の程度によって現在かかっている費用(14万円)がどう変わるか。

・収入の低い人への負担が多くなる制度は問題ではないか。要介護者がいて施設に受け入れてくれない人の介護者の立場になって考えて
  ほしい。入所できる人はそれだけで満足しているに決まっている。大変な思いをしている人は多いのでそれらの人の声を聞くべき。

・介護負担金を家族が支払っている、今後は費用はどのようになるのか。また、管理法方法はどうなるのか。

・費用面でどのようになるのか介護保険が始まってみないとわからない。具体的費用がはっきりしないと不安、気がかり。

・現在、年金だけでまかなってもらっている、今後どうなるのか。

・お金はどうなるのかな。

・費用の不安(この施設では、かかる費用がどのくらいになるのか。)

・金銭面の不安ー補助はどうなるのか。

・処置費がおりないため、利用料金がいくらになるのかという不安はある。

・今後の料金、費用など細かく知らせてほしい。お金が足りているのかを心配するのでお知らせいただくことで安心させてほしい。

・とりあえずは金銭的負担がないことだけが私の願いです。労力の負担はがんばれますが年金内にて収まるようにと願っています。4月か
  らのこの制度がお金の内老人の害にならなければとずっと思っています。

・利用者からむやみにお金を取らないでほしい。また、施設から出されることなくかk後を充実してほしい。

 

H制度に関すること

・介護保険と利用者負担についての確定した説明をしてほしい。また、利用者とその家族に納得のいく制度にしてほしい。

・介護保険が始まり、大ショックを受けています。4/1より早速入院したのです。(中略)入院後8日以上入院が続いた場合園にはいれな
  くなります。8日以上で退院の場合ショートステイトしての2週間滞在し、その間に部屋が空けば再入院となります。それ以上の場合は
  紹介もしますとは言ってくれていますが、91歳もこえた老人がいつ入院するかもわからない状態でまた入院して8日間くらいで退院でき
  る日とはまれだと思います。こんな制度を誰が決めたのでしょう。弱者をその上に苦しめる。家族も毎日針で刺されたような気持ちで
  暮らしています。何とかならないでしょうか?

・どのようにしていいのか、難しくてよくわかりません。簡単に説明してある冊子かなにかがあればいいのですが。

・介護保険後の利用料が詳しくわかりやすい説明をしてほしい。

・サービス内容の変化についての不安。サービスのどの部分が保険対象内なのか外なのかわからない。

・介護保険のことはよくわからない。

J介護認定に関するもの

・認定の結果、施設に入れなくなるひとはどうなるのか。

・介護保険の開始に伴い、さまざまな業種からの参入がありますが、結局利用する側は、何を基準に入所先を決めたらいいのかもわかりま
 せん。仮に、評判の良い施設があったとしても、老人にとって環境が変わることは好ましくなく、今現在入所している施設の質の向上を
 のぞまるを得ません。

・認定(結果)がまだきていないのが不安である。

・要介護認定の基準−何を基準に設定するのか納得いかない。あいまいである。認定結果の2割の修正とはなぜか?痴呆の方の判定方法は
  どうなるのか?

・要介護認定は公正な評価でない。判定はじっくり行う必要があるのではないか?基準が不明確である。

・要介護4なので安心してお願いしたいと思っている。やれやれ、良かったと思う。施設に対して信頼感あり。

その他

・大変お世話になりますがよろしくおねがいします。

・入ってしまったらありがたい。入るまでが大変。

・心のケア、その人にあったケア。 など

V.分析

経済的不安を訴えている家族の特徴を明らかにするため、経済的不安があると答えた人と性別、年齢、家族の経済状況(自己の暮し向きに関する評価)、訪問頻度とをクロス集計にかけてみた。

(クロス集計の結果)

経済的不安*性別

経済的不安*年齢

経済的不安*家族の経済状況

経済的不安*訪問頻度

クロス集計表

性別 * 経済的不安


 
 

年齢 * 経済的不安

暮らし向き * 経済的不安

訪問の頻度 * 経済的不安

度数分布表

クロス集計表

4つの分析結果では、暮し向きの評価に関してカイ2乗検定の結果は有意であった。経済的な不安があると答えた人13人のうち11人の方が自己の暮し向きを世間並以下と評価している。このことから、自己の経済状況を低く評価している方の大半が介護保険の導入に際し、経済的な不安を訴えていることが明らかとなった。

5.まとめ・今後の課題

   記述問題の回答をコード化することにより、現在のご家族の関心事は、経済的な不安、制度に関する不安、次いで入所者へのサービスに関する要望、介護認定に関することがらに集中していることが明らかとなった。制度に関する不安の中には、ないようが全くわからない、わかりやすい説明をしてほしいとの回答も目立った。自己負担に関する経済的不安を訴え、制度そのものに関する理解不足を訴えているご家族の方もいるようだ。介護保険導入直前になっても、負担料金が確定せず、利用者の不安を助長する状況であったことも否めない。サービス受給者が制度を理解できるような更なる配慮が可能であったのではないか。納得のいく説明が求められているのではないか。
 
 

                                          
ホームページにもどる