Title

海洋汚染

;韓国の海を例として

発表者 #923 金 世徳
キーワード
要 旨

 わが国、韓国は中緯度に位置する地理的条件から、美しい四季と、豊かな海の幸に恵まれ、古来からその恩恵にあずかってきた。近代になって平地が狭い国ゆえに、産業・経済の発展のために、陸域では河川改修・ダムなどの建設、沿岸域では海岸保全施設の建設や臨海部の埋め立てなど、国土の保全とその高度利用を進めてきた。その結果、経済の規模は大きく成長し、国民一人当りの所得は伸び続け、国民のほとんどが海外旅行を楽しむまで豊かになってきている。その反面、私たちが失ってしまったものも少なくない。美しい海辺で波の音と潮風で心をいやし、思う存分に憩いの時を過ごせる機会が少なくなってしまったことも一つであろう。人々は、経済的な繁栄を得ることができたにもかかわらず、生活の豊かさを実感できずにいるのは、海辺の自然環境を失ったことも要因の一つではないだろうか。潮の香りや潮騒のひびきの失せた浜辺からは安らぎはえられないし、子供たちの夢も育たない。経済の発展に伴う大都市への人口の集中により、大都市圏では大量のゴミや生活排水が発生し、その多くは海に排出され、近海の水質を悪化させている。韓国第一の港湾都市釜山(プサン)を例にとると、1960年頃から、海浜の埋立てと海水の汚れにより、各地の海水浴場や潮干狩り、庶民に親しまれたハゼ釣りなどが次々に姿を消し、最近、釜山周辺の漁港では、夏場になると海底付近が酸欠状況となり、魚介類が生存できなくなっている。1980年代に入って、周辺の住民達は工業先進国病と呼ばれるいわゆる「イタイイタイ病」や「水俣病」に苦しみ、政府は住民たちの移住対策を立てる結果となった。

 また、大都市の臨海部に建設されている殺風景な工場や石油タンクの群れや、人工護岸の連なりは、人々の海辺へのアプローチを拒み、大都市圏に生活する人々の潤いの場を奪っている。  海洋汚染の進行度は人々が思っている以上に進んでいるものである。その影響が目にみえる形で現れた時には回復が不可能である。したがって海の環境汚染を先に防ぐ国家的な総合的海洋環境保全対策が必要であり、我々個人としても海洋環境保全への認識を再確認し、きれいな海を我々が自分たちで守ろうという意識が必要なのではないだろうか。

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