リサーチフェア2002

0.問題意識


0-3. 潜在能力アプローチと政策−情報的基礎−

 相対的不平等やこれまで築いてきた価値観とのギャップが新たな問題を生じている社会状況で,GDP指標を超える政策のための新しい福祉の指標が求められているだろう.その指標の一つとして注目されているのが,1998年度ノーベル経済学賞受賞者アマルティア・センが開発した潜在能力アプローチである.

 このアプローチの特徴は,財貨の量や特性そのもので福祉を測るのではなく,その財貨を個々人がどれだけ活用できるかにまで踏み込むかを評価する点にある。また,福祉における個人間比較の不完全性を認めている.それは人間が多様であるゆえに,不完全性の現実的理由が存在するからである.したがって,福祉や不平等の比較の曖昧さは排除せず残すことになる.

 この潜在能力アプローチの中身を2章でみる.その前にかつて福祉の経済的指標として活用されたGDP指標について1章で論じたい.最後に3章で,潜在能力アプローチが政策の情報的基礎としてどのように活用できるかを考えたい.


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