はじめに


今日世界中で“ヒト・モノ・カネ”のグローバル化は急速に進んでいる。日本国内だけにおいても日本人の海外旅行は年間約1620万人、街で外国人を見かけることも珍しくなくなった。また「Made in Japan」でない商品などあたりまえだし、世界中の人をターゲットにした世界共通商品も多い。さらに“カネ”という観点では海外旅行時の外貨両替だけではなく、最近では外貨建ての預金も人気であるようだ。このように私たちの日常レベルでさえ国境を越えたボーダレス社会は蔓延していると言えよう。

では企業レベルではどうだろうか?上記の“ヒト・モノ・カネ”にあたる“労働力・原材料/製品・資金”の国際化を感じていない企業は皆無に近いのではないだろうか。国際化の程度は企業によって異なるにしても、これら3要素を最小限の犠牲または妥協でもって管理することは、現代企業活動の大きな課題となっていることは間違いない。

このような背景のもと、今回私が“多国籍企業の経営”というテーマに取り組もうと考えたのには大きく2つの理由がある。1つは多国籍企業と呼ばれる企業は一般に、上記で述べた“ヒト・モノ・カネ”3要素を同時に管理するという特異な立場にあり、その経営戦略に興味を持ったからである。2つめは日本国内のグローバルビジネスの体質を明らかにし、日本のグローバル化への近道を考察したいと考えたためである。この点については実際の事例を用いて考えたい。

 この発表のゴールはグローバルビジネスを行う際に分類される組織体系の明確な種類の提示と、ビジネス成功に必要な要因を分析することである。 

本発表が経営学や外資系企業に興味のある方はもちろん、そうでない方にも日本企業のグローバル化について考える機会になれば幸いである。


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