3-1 人・動物・自然へのかかわりに関するアンケート調査
     3-1-1 質問項目
     3-1-2 予想される調査結果
     3-1-3 実際の調査結果
    3-2 人・動物・自然への関わり


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 このような問題意識から、私たちは今回、「人」と「自然」への関わり方の相関関係を調べるために、アンケート調査を行いました。

 アンケートは、ペット問題をテーマとした「命のきづな」写真展に訪れた方、(これは今年10月末に、兵庫県の動物愛護センターと関学三田キャンパスの大学祭にて開催されたものですが)、その場で合わせて150名の方から回答を頂きました。


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 質問項目には、日常生活で実際に取った行動をたずねる質問を準備しました。たとえば、「人との関わり」については、「電車やバスなどで高齢者に席を譲ったことはありますか」、「車椅子や介助を必要とする人に手を貸したことはありますか」という2つの質問をしています。また、「自然との関わり」については、「ペットボトルの分別など環境に配慮した行動をとっていますか」、「有機栽培などの食品を購入した経験はありますか」という2つの質問をしています。

 集計の際は、これらの「人」、「自然」のそれぞれの質問に対して、「はい」という回答には1点、「いいえ」という回答には0点で得点化し、合計得点が平均以上のグループと、平均以下のグループに分けて、人数を整理してみました。 


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 人へのかかわりと自然へのかかわりの相関関係、このような観点から調査結果を予想してみますと、「人に対して配慮のある人は自然に対しても配慮がある」、あるいは「人に対して配慮のない人は自然に対しても配慮がない」、この2つのタイプのグループに回答は集まるだろう、ということが考えられます。


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 では、実際の調査結果を見てみましょう。この表の中では、「人」と「自然」それぞれの領域について、平均以上のグループを○、平均以下を×、で示しています。見ていただけると分かりますように、「人と自然の両方とも○」のグループが最も多くて51名、「人に対しては○だが自然に対しては×」というグループは48名、逆に「自然に対しては×だが人に対して○」は19名、「両方とも×」のグループは32名という結果になりました。

 この結果をまとめますと、さきほどの予想に従えば、「人に対して配慮のある人は自然に対しても配慮がある」、あるいは「人に対して配慮がない人は自然に対しても配慮がない」、というグループに人が集まるはずでした。今回の調査では、それほどはっきりとした差ではありませんでしたが、やはりある程度は、この表の中では赤色と緑色のグループになるのですが、「人と自然の両方に対して配慮がある」、あるいは「両方とも配慮がない」というグループに人が集まっているということができると思います。

 もちろん今回の調査は、「人」と「自然」への関わりという問題意識に対して、質問としても非常に限られた内容のものですし、結果としてもそれほど大きな差があったわけではありません。しかし、それにもかかわらず、「人への配慮」と「自然への配慮」は、ある程度の相関関係を相互にもっているということがいえると思います。


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 ここであらためて今回の発表をふり返ってみますと、自己中心性を拡大しようとする力、つまり自分の思い通りにしようとする一方的な関わりは、たえず環境世界とのコンフリクトを生み出します。それでもなお、より一層強い力で押し通そうとすれば、環境世界とのコンフリクトは、いつまでも終わることがありません。

 しかし、このような衝突が生じるしくみを明確に認識した人は、これ以上環境世界とのコンフリクトを生み出したりはしないでしょう。つまり、自己中心性の仕組みを明らかにすることによって初めて、自己中心性を抑制する道も開かれてくるのです。

 環境問題をはじめとする自然環境問題、そして人や動物との関わりにおけるモラルの低下など、これらのさまざまな領域における倫理的課題は、人間生活の広い視野の中で、今後も引き続き研究を進めていく必要があります。総合政策が掲げる共生の理念、あるいは「エコロジーの理念」はまさに、このような人間の自己中心性に対する反省にもとづくものであります。その意味で、今回の発表テーマであるペット問題は、エコロジーの理念をあらためて問い直すものであったと考えています。


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