■ 解決策と課題

債務超過の解消方法には、
■ 民事再生法など法的整理
■ 銀行への債務放棄
■ 経営を立て直す
などが挙げられます。

しかし、元大阪市助役現大阪市長の関淳一氏は
「特定調停の結果を踏まえ、会社経営陣や大阪市の責任を明らかにする」としつつも、三セク自体については
「市民の共有財産」として存続させる方針をとっています。

では残るは

■ 銀行への債務放棄

つまりは「借金を棒引きしてもらう 」ことです。
現在のWTCの債務超過は245億円、借入金残高は997億円にのぼります。
しかしWTCは今も毎年約13億円の赤字を出しており、これでは借金を返せる見込みはありません。

そこで、銀行への債務放棄を行うことで一応の借金を返せるまでに立ち直させることが出来ます。

実際、今年の8月21日の特定調停の第一回調停では
大阪市のWTC,ATC,港町開発センターの3社に対する長期貸付金のうち、
 ■ 695億円を株式化し市が保有することで、債務返済を事実上免除する
取引銀行に対しては、2200億円の借入金のうち、
 ■ 963億円の借金を棒引き、
 ■ 残りの貸し出し金利を1.38%〜1.8%から1%程度に減らす

という要請を出しています。
銀行側との折り合いはまだついていませんが、現状では利息すら返せないのですから
もはや債権放棄以外改善策にはなりえないのではないでしょうか。
少なくともこれ以上公的資金の投入という税金の無駄遣いは避けるべきです。


共有の財産として存続する以上、毎年赤字ではせっかくの債権放棄も、抜本的な解決策とはなりません。

では、今後も存続させるのであれば、もう一つの方法

■経営を立て直す

が不可欠であるといえます。

しかし、テナントの入居率が100%近いにもかかわらず、そのうち80%が貿易に関係のない役所とその外郭団体となっている現状では
到底黒字転換など見込めません。

ではいったいどうやったら黒字になるというのでしょうか?
@民間企業としての醸成を
少なくとも現状では、ATC、WTCは一刻も早く会社を清算、法的整理し、これ以上税金を投入しないことが被害を拡大することを防ぐ最良の策です。

■ 経営を立て直す
・第2回 三セク再建 

来年2月に注目の最終調停 「三セク三社は市民の共有財産。特定調停で何とか金融機関に理解を求め、再建の方向に持っていきたい」
磯村隆文市長は巨額の債務超過に陥ったアジア太平洋トレードセンター(ATC)など大阪市の第三セクターの再建策を記者会見で問われると、
三セク三社を破たんさせるのでなく、「市民の共有財産」であるとして存続させる意向を強調した。現在、三社は二十余りの金融機関に対し、
債権放棄を含む総額千五百五十三億円の金融支援を求める内容の再建策を大阪地裁に提出している。今回の市長選でも三セクの処理の問題は最大の争点となっている。
巨額の債務超過に陥って特定調停を申し立てているのはATC、大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)と湊町開発センター(MDC)の三社。
三社の経営状況は、ATCが二百五十三億円の債務超過で、借入金残高は千二百六十三億円。WTCが二百三十六億円の債務超過、借入金残高九百八十二億円、
MDCは九十五億円の債務超過、借入金残高五百五十四億円。これら三社は当初、銀行などに合わせて約八百億円の債権放棄を求めたが、
折り合いがつかないことから六月に特定調停を申請した。ところが、特定調停で示された再建案では銀行側への支援要求額は約九百六十億円とさらに膨らんだ。
金融機関からは融資の約七割に上る債権放棄に反発する声も強く、「民間企業の支援に比べ、あまりにも高率」との不満の声が聞かれる。

一方、再建案は大阪市から今後三十年間、補助金を受け続けることも前提になっている。最終の調停は来年二月十二日に示される予定だが、今後の展開は波乱含みだ。
三社は大阪市にも負担を求める予定だ。三社合わせて約五百七十億円にのぼる債務の株式化などの負担を求めているし、ATCとMDCの再建計画案は今後三十年間、
市から約三百五十億円もの補助金を受け続けることが前提になっている。市議会の中には市の負担が増えることを懸念する声は根強く、
野党のベテラン市議は「債務の株式化は返済がされない点では債権放棄と同じ。配当も期待できず、株主として市の責任が強まるだけ。根本解決にはならない」とする。
さらに、今回の再建策には盛り込まれなかったが、銀行側が債権を放棄した後、残る債権の返済が滞った場合、一部を市が肩代わりする損失補償も検討されているといわれる。
この点については与党市議の間でも「融資のリスク負担は銀行の責任。認められない」と特に批判が強い。ただ、銀行側も三社については破たん懸念先に分類して、
融資の一定額をすでに引き当て済みとみられている。特定調停に持ち込まれたことについても「失政のイメージの強い民事再生法など法的整理を避けたい市側と、
損失を抑えたい銀行側の思惑が一致した」(保守系大阪市議)と指摘する声もある。

■対応分かれる

 再建計画について、立候補を予定している元市助役(68)=自民、民主、公明、保守新推薦=は「特定調停の結果を踏まえ、会社経営陣や大阪市の責任を明らかにする」
としつつも、三セク自体については「市民の共有財産」として存続させる方針。一方、現在の市政を批判する渡辺武氏(66)=共産推薦=は「責任問題を明確にし、
これ以上の市財政と市民の負担を増やさない方向で解決策を検討すべき」とし、対応が分かれている。 WTCは九五年に開業し、〇二年度末の全体入居率は95%となっている。

しかし、この中には市の港湾、建設、水道などの五局と十二の外郭団体が含まれており、市関連施設の占める割合は約68%。さながら市の"第二庁舎"の様相を呈している。
市の支援にもかかわらず債務超過額は二百三十六億円、借入金残高は九百八十二億円に膨れ上がっている。
元市助役の阪口英一・WTC社長は「バブル期に過大な投資をしたのが原因。経営改善に努めてきたが、債務超過を単独で消すというのは無理。
バブル後の経済低迷が長引き、地価がこれほど下落するとは思わなかった。見通しが甘いと言われれば甘んじて批判は受ける」と述べた。
また、大阪市の磯村隆文市長は「先行投資型の仕事であって、意味があった事業だが、バブルの中でスタートしたため資本金を積むより借入金でやっていくという、
今から見れば間違ったやりかただった」と見通しの甘さを認めたうえで「再建のため最大限の努力をしていきたい」と述べた。

ただ、経営難に陥っている大阪市の三セクは三社だけでなく、大阪の財界などからは波及を懸念する声も出ている。
この日記者会見した大阪商工会議所の田代和会頭もその点への懸念を示し、第三セクター方式そのものについても「収益を多く生んでいくための運営上の工夫も必要だ」
と苦言を呈した。
3社とは、大阪市臨海部で大規模商業施設・オフィスビルのATC(アジア太平洋トレードセンター・資本金221億円・借入金残高1266億円)、
WTC(大阪ワールドトレードセンタービルディング・資本金94億円・借入金残高997億円)、MDC(湊町開発センター・資本金80億円・借入金残高562億円)。

 いずれもバブル期に巨額の資金を投入、バブルの崩壊と不況の進行で破たん。ついに公的資金の投入という無責任な結果を招いたもの。

第三セクターについて

第三セクターとは、国・地方公共団体と民間事業者との共同出資で設立された法人。三セクと略される。
国・地方公共団体を第一セクター、民間事業者を第二セクターとし、それらとは違う第三の方式による法人ということで、第三セクターと呼ばれるようになった。
赤字ローカル鉄道を引き受ける事業主体としてのものが有名だが、それ以外にも地域振興などを目的とした第三セクター会社が各地に設立されている。