平成の大合併における、かな市町村名増加の背景

(第1班共同調査:森麻以子、竹内えり)

 

平成の大合併とは・・・市町村合併を支援する合併特例法の期限が来年3月末に切れるのを見越して、それまでに3000ある市町村を約3分の1へ合併によって減らそうとする動きで、これに伴って現在20市町のかな地名が誕生しつつある。平成の大合併におけるかな地名とは、2001〜2005年の期間中のみを指すが、2001年以前にもひらがな地名の自治体は11存在する。例えばどのような地域が、漢字からかな地名に変更しているのかというと、下記のようにまとめられる。

 

●つがる市(青森)にかほ市(秋田)さくら市(栃木)みかも市(栃木)さいたま市(埼玉)

かほく市(石川)あわら市(福井)ひらなみ市(岐阜)いなべ市(三重)みなべ町(和歌山)南あわじ市(兵庫)東かがわ市(香川)さぬき市(香川)つるぎ町(徳島)いの町(高知)きほく町(愛媛)うきは市(福岡)東そのぎ市(長崎)あさぎり町(熊本)さつま町(薩摩)

 

 かな地名増加の原因・背景は何なのか、私たちで考えた仮説は、

@わかりやすさ硬いイメージの排除、新鮮さ、親しみやすさ

A目新しさ他地域とは違うという意思表示、単に目立ちたい

B観光宣伝外部の人を集めて、経済の活性化

C流行世間の注目を浴びようと、話題を呼ぶことに飛びつく

以上のことから、かな地名には深い意味がなく、新鮮さや目新しさに焦点をあてて決定された結果、地域の持つ歴史的、地理的背景の喪失につながるのではないかと考えた。それを確かめる為アンケートを実施することにした。

 

     アンケート結果

私達は、20市町ある内の19市町にアンケートを行い、その内12市町から返答を得ることが出来た。

     アンケート内容

@かな地名決定までの経緯 Aその決定に対する住民の評価 Bかな地名に変更した背景・理由・目的 Cかな地名への変更でその目的は達成されたか

特に@とBの返答から、興味深い回答が得られた。

 

●アンケートから分かったことの1つとして、合併協議会設置での募集要項・選定用法の提案・決定の後、公募により多数の案が集められ、その次に小委員会にて5〜10程度に絞りこみをし、最終的には協議委員による投票で決定となる、共通のプロセスがあることが挙げられる。また、公募時の多い少ないはあまり考慮されないという面を持つ。

 

     アンケートから分かったことの2つ目に挙げられるのは、地名決定の背景はそれぞれの自治体ごとに違っていること。つまり、各自治体のアピールしたいことが、新地名の性格となって表れている。例えば、福井県あわら市の場合これまで「芦原市」で、あしはら・あばらなど統一された呼び方がなく、ひらがなにすることによって読みやすさを重視した面と、「あわら温泉」は以前からひらがなで表記されていた為、観光客を狙った全国的なPRに。熊本県あさぎり町では、霧が深いという地域の特徴を重視し、さらに新鮮さ・清らかさを考慮。また子供からお年寄りまでが読みやすいという性格を持ち合わせる。香川県さぬき市では、「さぬきうどん」「讃岐の金毘羅さん」など“さぬき”という呼び名で親しまれている為、観光面でのPRを重視。観光・産業を中心とした町作りを目指している。

 

     仮説とアンケート結果からのギャップ

 わかりやすさ、読みやすさを重視。それに加えて、地域の特徴をよく表す名前にし、その土地の広告、観光地としてのPRになるように考えられている。目新しさ・流行やブームのみに基づいたものではないのではないだろうか。

 

     《結論》

かな地名化≠その土地の歴史的・地理的背景の喪失

          ↓

かな地名化以前の地名にあった、広告としての役割、その土地の特色を表現するという役割を考慮しつつ、さらに平仮名にすることで、あらゆる層の人々にとって読みやすい地名となる。