日本・韓国の大学生における公共心の比較   

0074 松浦友美 #0093 竹山典子 #0135 徳田陽子

0517 韓 大樹 #8024 李 天雨

 

今回、民族・文化ギャップを調査するにあたって「日本・韓国の大学生における公共心(マナー意識)の比較」を題材として選択し、事例収集の手段として双方の大学生を対象に同じアンケートを実施した。アンケート実施人数は、韓国−男性:30名 女性:31名 計61名、日本−男性:38名 女性:45名 計83名である。アンケートは「学校・授業態度」と「公共の場」の二場面についてそれぞれ設問を設け、該当する選択肢を回答する形式をとり、最後に自由記述を設けた。以下に、アンケート結果とその考察を記す。

 

1.考察:学校・授業態度…授業中の私語と携帯電話の使用について調査。

 

授業中の私語(質問1.2

日本の方が騒がしいと答えた割合は高い。また、騒がしい状況下での対応を比較すると、日本は75%が「何もしない」と回答し、14%が「席を移動する」と回答した。一方、韓国では30%が「注意する」または「教授に訴えて注意してもらう」と回答し、「何もしない」と回答したのは48%であった。以上から、日本は騒がしいと思っても、見て見ぬふりをする傾向が高く、一方、韓国では半数は見て見ぬふりをするものの、注意を促し、迷惑行為を許さないという、日本の調査結果には表れていない意識がみられる。

 

携帯電話の使用(質問 3.4.5

「授業中に携帯電話を使う」と回答した割合は、日本が76%、韓国が41%であった。また、「授業中の電話に出ない」と回答した割合が双方で最も多数であったが、日本では34%が「教室の外で電話に出る」と回答し、韓国の7%に比べ高い割合を占めている。これより、日本には「教室の外で電話に出る」という行為はマナー違反ではない、という認識があるように感じられる。

 メール交換については、共に「本来ならばやるべきことではない」と回答した人数が最も多数であったが、「人それぞれだからかまわない」と回答した割合が日本では45%、韓国では31%であった。

 

まとめ

以上5項目の調査結果より、授業を受ける際、日本では「人に干渉しない、されない」という意識が強く、無関心を装う傾向がみられる。これには、二つの見解を示すことができる。一点目は、「人は人、自分は自分」というように、本当に他人に無関心であるということ、二点目は他人の迷惑行為を注意することで関係が悪くなることを懸念しているということである。

一方、韓国では目上の立場である「教授」に対する敬意と、授業を神聖し、迷惑行為を阻止しようとする傾向がみられる。「目上の人を敬う」という韓国の規範に加え、教授・生徒という師弟関係が、より一層教授(目上の人)への敬意を深めていると思われる。また、自分の主張を通すという傾向もみられる。

2.考察:公共の場…電車内・駅構内と街頭でのマナーについて調査。

 

電車内・駅構内におけるマナー(質問 611

  まず、「お年寄りへ座席を譲る」と回答した割合は、日本・韓国共に90%を超え、そのうち「必ず譲る」と回答した割合は共に40%前後で大差はなかった。儒教精神が根強い韓国の方が席を譲る割合は高いだろうという予想であったが、日本と大差がないという結果がみられた。

  次に、電車内の携帯電話の使用について、「気にせず使う」または「迷惑行為と思いつつも使う」と回答した割合が日本では41%、韓国では77%であった。また、車内アナウンスの有無を尋ねたところ、日本ではほぼ全員が「ある」と回答しているのに対し、韓国では「ない」と回答したのが72%に上った。これより、日本ではアナウンスの呼びかけなど、車内の携帯使用についてのマナーが確立されており、人々の間にもその意識が広がっている反面、韓国で携帯使用についてまだ確立されたマナーはなく、周りの迷惑を気にしつつも使用しているのが現状であることが分かる。

  通路や階段での座り込みについては、双方とも半数前後が「座ったことがある」と回答した。次に、その行為についてどう思うかを尋ねたところ、日本では55%が「本来ならばすべきでない」と回答し、最も多かった。一方、韓国では70%が「人の邪魔にならなければかまわない」と回答した。この違いより、日本では「座り込みはマナー違反」という意識があるのに対し、韓国では「他者に迷惑をかけているかどうか」で判断されることであり、マナーに関わることではないという意識がみられる。

  最後に、車内での女性の化粧について尋ねたところ、双方でほぼ同じ傾向が読み取れ、「とても不快」または「少し不快」と「何も思わない」を回答した割合がほぼ5割ずつという結果になった。そこで、男女に分けて比較したところ、双方で再び同じ傾向がみられ、男性では「不快」と「何とも思わない」を回答した割合がほぼ半々であったが、女性では「不快」と回答した割合がともに60%前後となった。差は僅差であるが、女性の方がより不快に感じる傾向にあることが分かる。これより、「化粧」という行為が女性にとって身近であり、生活の一部分であるため、公共の場でやるべきことではないという意識が女性には強く、一方、男性にはあまり縁のないもののため、生活感が感じられず、女性ほど不快感を感じないのではないかと考えられる。

 

街頭でのマナー:歩きタバコ(質問 12,13

  日本・韓国共に「なるべくすべきでない」または「決してすべきでない」と回答した割合が80%を超え、双方で歩きタバコが迷惑行為かつマナー違反であるという意識がみられる。しかし、今回行った調査では双方ともタバコを吸わないという回答が8割を占めていたため、非喫煙者からみた見解であると判断すべきであり、喫煙者の意識を把握することは出来なかった。

 

まとめ

  以上8項目の調査結果より、日本では公共の場においてマナーを意識し、守ろうという傾向が高く、一方、韓国ではマナーを意識はしているものの、それに常に従おうとするわけではなく、他者に迷惑をかけなければ、ある程度個人の自由に振舞うという傾向が読み取れる。

  

3.全体のまとめ

  以上のアンケート結果と考察より、日本の大学生は学校、電車、街頭など全ての公共の場においてそれぞれの場面に応じたマナーを意識し、自分は従おうとするが、他者のマナー違反に対しては無関心、または寛大である傾向がみられる。それに対して韓国では、場面に特定の敬意を払うべき目上の相手(授業の場面ならば教授にあたる)がいる場合、マナーを意識し、それに従うが、不特定多数の人々が行き交う公共の場では、さほどマナーについては意識せず、他者にとって迷惑行為かどうかに重点が置かれる傾向がみられる。