パーソンズ・グールドナー講義録 97/7/3 

担当:生島卓也 吉良敦岐

 パーソンズはAGIL図式によって、社会を部分によって作られたシステムとしてとらえようとした。そして、個々の部分はそれぞれの役割があるのである。パーソンズはシステムとしてAGIL図式をとりあげ、その内部の四つ要素の中で一つでも機能がしなくなると、社会は機能しなくなると考えいる。また、図式するとたった四つの機能に分けられるのだが、その一つの機能の中にはまた四つの機能が含まれており「入れ箱構造」になっているのである。

 これに対して、部分間の関係に関してグールドナーが疑問を問いかけた。パーソンズは全体に目を向けるあまり、部分の均衡の問題を軽視していると彼はいう。パーソンズの考え方だとAGIL図式の一つがかけると社会が存在しないと考える。つまり、四つの要素は深い依存関係を持っていると考えている。ところがグールドナーの方は四つの関係が強いものではない、一つがかけても他のところで補うことが可能であると考えいているのである。また、この問題は部分と部分の関係だけではなく、システムと部分の関係でも同じことがいえる。部分はシステムに従属するものではなく、システム・部分両方が互いに対して戦略を立てることにより、システムの均衡が生まれているのである。

<<遠藤先生のAGIL図式研究>>

rule making

運営

紛争処理

イデオロギー(共同幻想?)

 原始状態では労使関係は原始状態は対立が続いている。そこでrule造りを始めることになる。いわゆる慣行を作るのである(=A)。次の段階では、そこで作られたルールをいかにうまく使っていくかが問題になる(=G)。ところが、さまざまな構成要素が分化し労使間のまとまりがなくなるときがあり、その時は関係自体が成り立っている統一のイデオロギーが必要になるのである(=I)。最後には、紛争を処理する段階に移るのである(=L)。

 この中でパーソンズ的にどこかがかけると労使関係というものがつぶれると考えるということになる。したがって、イデオロギーギャップが生まれるとこのパーソンズのモデルが崩れることになる。グールドナーのモデルでこれを考えると、別のイデオロギーが存在してもこの図式は継続していくと考えることができるのである。


97/7/10 ルーマン・リップマン講義録

担当者:朝山 由美子、松原 洋平

『26 世界の複雑性と自己準拠システム (N・ルーマン)』 山口節郎著

 従来の社会学のような構造・機能的理論では「社会には一定の構造がある」という前提(存在論的システム概念)から避けられてきた「社会はいかにして可能になるのか」といった問題に対して、N・ルーマンは構造概念のうえに機能概念を置く機能・構造的理論の立場(等価機能主義)から、無数にある可能性(世界の複雑性)を他の可能性を保持(複雑性の維持)しながらも秩序化(複雑性の縮減)して可能性を限定する方法としての「構造」形成を明らかにし、行為者が「期待できる」のは「システム」が「意味」を生み出すことで「複雑性の縮減」がなされるためであり、「システム」とは機能的に等価な選択肢を模索し保持する、つまり「意味」を構成する主体であることを指摘しているが、こうしたルーマンの議論を今後はパーソンズやハーバーマスとの論争、あるいは実証主義論争などのなかで観ていかなくてはいけないであろう。

『48 擬似環境と民主主義との矛盾(W.リップマン)』 亀山佳明著

 交通や通信の高度に発達した現代では、直接個人が接触し経験し認識することができないような情報までも取り入れて生活しなければならない環境におかれている。リップマンは、自ら直接経験できる環境を「現実環境」と呼び、、伝えられる情報にもとづくイメージを自分の環境と思い定めたものを「擬似環境」と名づけた。

★リップマンが掲げる現代社会の憂慮

(擬似環境に支配されることによって我々の行為が現実からかけ離れたものになってしまい、その結果、確実な行為のための基盤が崩壊の脅威にさらされること)

1 現代人はステレオタイプに支配されやすい
2 媒介者が現実環境とのずれを増幅している
3 環境の根本的変化が近代社会の主要な政治制度である民主主義を変質せざるをえない

出典『命題コレクション 社会学』 作田啓一・井上俊編 筑摩書房 1986年。