墨子講義録

担当;西沢真則、松原洋平


キーワード

(1)個人と集団の関係
(2)上部構造と下部構造の関係
(3)コンテンジェンシー

 社会学の中心命題である、個人と集団の関係(ひっくるめてシステムの問題としてもよいのだが)は、中国思想ではどのように解かれてきたのだろうか。古くから中国で説かれてきた「道」を、我々の知りうる言葉で置き換えるならば、インターアクションと表現もできるだろうし、ルーマンのコンテキストでいえば、意味概念と表現してもよいだろう。現実は何かという問いを人が立てたときに、その見方には、常にフィルターがかかっているということを念頭に置けば、その際、危険なのは、固定化したものの見方に陥り、実体を作ることに走ることになる。

 ゼミで問題とされていた、墨子の言葉、「宿命の否定と、天への服従」という二つの一見すると矛盾した立場は、「意味」「インタラクション」「道」を中心にして解くことができる。天と人の関係は、非常にインターアクティブである。天の声とは、即ち、民の声だが、これは集合意識のことである。これに我々はついつい名前を付けてしまう。そうすることによって、支配構造の実体化ができてしまう。システムを作って、絶えずつぶしている。つまり実体を作らない。