ダーウィン『人類の起源』

担当:生島、大木、志摩


1 パンジェネシスの仮説とは何か。
2 相関的変異(相関変異)とは何か。
3 人間と下等動物の相違を明確にするものとして、「人類の起源」ではどのようなものが挙げられているか。
4 ダーウィンが認めている「種の起源」の初期の版のうちに犯している過ちとは何か。また、なぜその様な過ちを犯したのか。
5 自己犠牲といった社会的美徳は、自然淘汰では獲得・遺伝は難しいと考えられる。では何がそれを促すのか。
6 ダーウィンは、人種が多様に分化した理由として、生活環境への適応や、体の各部分を絶えず使用した効果や、相関の原則、また自然淘汰をも否定するが、それはなぜか。
7 第二次性徴とは何か。
8 自然淘汰と性淘汰との違いを述べよ。
9 オスの蝶が派手な色調の羽をしていることが多いが、敵に狙われやすいという不利な状況に陥るにもかかわらずそうなったのはどういう理由からと考えられるか。
10 雌雄に別れる動物は一般的に、メスはオスと違って第二次性徴が発達しないことが多いが、それは何故か。
11 鳥類においてオスのメスより優れた能力はどういう意味を持つか。
12 哺乳類のオスがメスを勝ち取るために行う特徴的な手段は何か。
13 哺乳類のオスの牙や角がメスのものより発達しているのは何故か。
14 男が女より力が強くなったのは何故か。
15 人間の性淘汰を妨げる要因としてどんなことがあげられているか。
16 ダーウィンの説を涜神的だと批判する人々に対してどう反論しているか。


発表用レジュメ

1 パンジェネシスの仮説とは何か。

・代償作用や成長の経済が何の役割をも果たす事ができないほど、既に働きも持たず、非常に小さくなってしまった器官を、完全に且つ最後的に抑制する事については、多分パンジェネシスの仮説の助けを借りれば理解が容易であろう。(p76)・パンジェネシスの説によれば、生物体の単位である細胞がジェンミュールという未発達の微粒子を放出すると、それが雌雄双方の子供に伝わり、自己分裂によって増殖するのである。(p284)

2 相関的変異(相関変異)とは何か。

・下等な動物と同じく、人間においても多くの構造が非常に緊密に関連しあっているので、ある部分が変化すると他の部分も変化する。(p103)

・人間においては、多くの奇妙な型はずれの身体構造が関連しあっている事を、この原理によって示した。(p119)

3 人間と下等動物の相違を明確にするものとして、「人類の起源」ではどのようなものが挙げられているか。

・私は、私の「種の起源」の初期の版ではあまりにも多くを自然淘汰や適者生存のせいにしすぎていた事を認める。(p119)

・その第一の目的というのは、種は一つ一つ別々に創造されたのではないという事を示そうとしたのだし、第二の目的というのは、自然淘汰は習性の遺伝的な効果に大いに助長され、環境条件の直接的な作用によってわずかながら助けられるとはいえ、変化の主な原因であったのだという事を示そうとしたのである。(p120)

4 ダーウィンが認めている「種の起源」の初期の版のうちに犯している過ちとは何か。また、なぜその様な過ちを犯したのか。

・言語→人間だけが「その心のなかに浮かぶものを表現するために言語を使用する事ができる唯一の動物でもなければ、また他人が言葉で表現している事を多少とも理解する事ができる唯一の動物でもないのだ」

・有節言語→犬は多くの語や文句を理解するから、人間と下等な動物とを区別するのは、有節音を理解するかどうかという事ではない。

・特定の音声を特定の観念と結び付ける能力→しゃべる事を教えこまれたオウムが、単語をものや人や出来事と正しく結び付ける事は確かだからである。(p148)

・私は、人間と人間より下等な動物との違いの中で、道徳観念あるいは良心が、極めて重要であるといっている著者達の判断には全く賛成である。(p158)

5 自己犠牲といった社会的美徳は、自然淘汰では獲得・遺伝は難しいと考えられる。では何がそれを促すのか。

・人々の推理力や予測する能力が進歩すると、もし自分が仲間を助ければ、そのお返しに助けを受けるものだという事を、やがては各人が知るように成るであろう。

・社会的美徳を発達させる、別のそしてもっとずっと強い刺激は、自分の仲間の賞賛と非難によって与えられる。(p192)

6 ダーウィンは、人種が多様に分化した理由として、生活環境への適応や、体の各部分を絶えず使用した効果や、相関の原則、また自然淘汰をも否定するが、それはなぜか。

いまや、人種間の外見上の特徴的な違いは、生活条件の直接の作用によって

も、体の各部分を絶えず使用した効果によっても、相関の原則によっても、十分には説明されえないことが分かった。そこで人間によく見られるわずかな個人差が、自然淘汰によって何代もの間に保存され、また増大したのではないだろうかということをただすことになる。ところが、ここでわれわれがすぐに出くわす障害は、有利な変異だけがこうして保存されうるのだということである。われわれに判断できるかぎりは、この点については常に誤りを犯しやすいのではあるが、人種差の中には、人間にとって直接に、または特別に役立っているようなものは一つとしてありはしないのである。(p258〜259)

7  第二次性徴とは何か。

雌雄両性に分かれている動物では、両性は当然異なった生殖器官を持っているが、このような生殖器官による違いを第一次性徴という。しかし雌雄は、ハンターが第二次性徴と名づけたところの、生殖行為と直接関係ない諸形質においても区別されることが多い。たとえば、オスは、メスをすばやく見つけ出すためとか、メスに近づくために、メスには見られない感覚器官や運動器官を持っていたりする。たとえこれらの器官がメスにあったとしても、その発達はオスの方がはるかに著しい。オスはまたメスをしっかりとつかまえるための特殊な把握器官を備えている。(p261)

8  自然淘汰と性淘汰との違いを述べよ。

自然淘汰は、自然環境の変化が原因として働き生物のうち生存能力のより優れた固体に変化したものが生き残るという生存闘争を形成する。一方、性淘汰では雌雄に分かれる動物のオスがメスをより確かにメスを獲得するために、優れた固体に変化したオスが繁殖の機会に恵まれ多くの子孫を残す。以下で、性淘汰の必然性を述べた部分を抜粋する。

・メスの構造から判断すれば、他のあらゆる点で、すべてのメスは一様に通常の生活習性にうまく適応しているのである。このような場合、オスが現在持っている構造を獲得したのは、生存競争の中で生き残るのにより都合がよいということからではなく、こうした構造を身につけたために他のオスに対して優位に立ったこと、またその優位性を子供の中でもオスだけに伝えたことが原因となっている。だからここで性淘汰が働いたに違いないのである。(p264)

・これらの形質は性淘汰の結果生じたものであって、自然淘汰の働きで発達したものではないことは明らかである。というのも、特別に資質に恵まれたオスがいさえしなければ、武器や飾りを身につけず魅力もないオスでも、生活のための闘争においては、みなと同じように成功し、またみなと同じようにたくさんの子孫を残すことができると考えられるからである。(p265)

9 オスの蝶が派手な色調の羽をしていることが多いが、敵に狙われやすいという不利な状況に陥るにもかかわらずそうなったのはどういう理由からと考えられるか。

資質に恵まれているオスが闘争や求愛において他のオスに打ち勝ち、その結果、子供をたくさん残すことによって生じた利点というものは、長い間のうちに彼らの生活条件によりいっそう完全に適応したために生じた利点よりも、むしろ、結局は大きなものとなるということである。(p282)

10 雌雄に分かれる動物は一般的に、メスはオスと違って第二次性徴が発達しないこが多いが、それは何故か。

たいていの場合、構造上の性差は多かれ少なかれ直接に種の繁殖に関連している。それというのも、メスはたくさんの卵を育てなければならないので、オスより多量の食物を必要とし、したがって食物をあさるために特殊の手段が必要となるからである。きわめて短期間しか生存しない動物のオスは不使用の結果として食の器官を喪失しても、別に何の障害も来さない。そのために捕食の器官は失われても、メスのところまで行き着くことができるように、運動器官は完全な状態でたれている。これに反してメスのほうは、もし飛翔とか遊泳とか歩行の能力を用いなくてもすむような習性を暫時獲得したならば、かりに運動器官を失ったとして差し支えないのである。(p263)メスは卵の形成にさいせて多量の有機物を消費しなければならないが、オスは競争相手と激烈な闘争をしたり、メスをうろう探しまわったり、声を発したり、芳香の分泌物を出したりすることに多くの精力を注がなければならない。(p279)

11 鳥類においてオスのメスより優れた能力はどういう意味を持つか。

異性の前で様々な魅力を丹念に誇示し、またしばしば地上や空中で奇妙な道化を演じるのはオスに限られている。どのオスも自分の競争相手を追い払い、もしきればこれを殺しさえする。従って、あるメスを自分とつがいにさせようとしむけるのがオスの目的であり、この目的を目指してオスはあの手この手を使ってスを興奮させたり、魅惑しようと試みるのだと結論してよかろう。(p.383)

12 哺乳類のオスがメスを勝ち取るために行う特徴的な手段は何か。

哺乳類のオスがメスを勝ち取るためには、自分の魅力を示すよりも、闘争の法則によってそうするものと思われる。戦いのための特殊な武器を備えていないきめて臆病な動物でも、愛の季節には死に物狂いの争いに加わる。(p.445)

13 哺乳類のオスの牙や角がメスのものより発達しているのは何故か。

メスにはない武器をオスが備えている場合には、その武器はオス同士の戦いに役立つものであり、それは性淘汰によって獲得され、オスだけに伝えられたものあることは疑う余地のないところである。(p.447)

14 男が女より力が強くなったのは何故か。

女に比べて男のほうが身体が大きく、力が強く、肩幅が広く、身体の輪郭がごつごつしており、勇敢で好戦的であるなどということが、全て人間の反動物的な先祖、それも主としてオスから伝えられたものだということは、ほぼ確実であるしかしこれらの形質は、人間の長い原始時代を通じて、最も強く、最も大胆なが、普通の生存競争においても、妻を求めての争いにおいても成功したために保存され、あるいはむしろ強められたのであろう。というのは、その成功によっ強く大胆な男は自分ほど資質に恵まれていない仲間たちよりもたくさんの子孫を残すことができただろうからである。(p.498)

15 人間の性淘汰を妨げる要因としてどんなことがあげられているか。

主な原因は、第一に、いわゆる群婚とか乱交とか呼ばれるものであり、第二に幼女殺しの結果、第三に婚約が早すぎること、そして第四に、女を単なる奴隷とか考えないことである。(p.524)

16 ダーウィンの説を涜神的だと批判する人々に対してどう反論しているか。

この本で到達した結論がきわめて涜神的なものだといって避難する人々があることは私にもわかっている。しかし、これを誹謗する人は、人間は変異と自然淘汰の法則によってある下等生物から派生したものであるという、一つの種としての人間の起源を説明することが普通の生殖の法則で説明することよりも、なぜ神に敬虔でないのかということを明らかにすべきである。種の起源も、個体の誕生も、等しく生命の偉大な流れの一部であって、それを行き当たりばったりの偶然の結果と見ることは、我々の気持ちとしてはできないのである。(p.533)