ゼミ合宿・比較思想ゲストブック

このページは97.9.24-26のゼミ合宿で扱われる比較思想に関する意見交換のためにつくりました。もちろんゼミではない方の書き込みも大歓迎です。

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Yasuo KAMATA ! <kamata@mars.dtinet.or.jp>
表題：「秋学期第一回研究演習資料（１０月２日）」
コメント：☆１０月２日・秋学期第一回研究演習テーマ「インド・中国」
　　　　　　　　　　　（ゼミ強化合宿のまとめをかねる）

【進め方】ゼミ強化合宿のときの「中国」のグループ分けごとに発表していただき、そのあと討議。

　古代インドでは十師外道、中国では諸子百家という言葉に象徴されるような、さまざまな思想集団の抗争の背後には、それまで当然のように機能していた人と人の共同性、人と自然の共生が、さまざまな地域集団、更には個々人の関心・利害の多様化とともに揺らぎはじめたという歴史的状況があります。孔子やブッダの出現も、そのような関心・利害の多様性、個人化を前提とした上で新たな共同性・共生の可能性を模索する動きであったといえるでしょう。つまり、これらの思想家たちの出発点になっているのは、単に無反省の共同性ではなく、むしろ共同性崩壊の危機意識である、ということをおさえることが大切ですし、そのような問題意識の故に、現代のわれわれにも訴えるものがあるのだと思います。

[1] インド（原仏教経典）
メイン資料：世界の名著『バラモン経典・原始仏教』から、中篇の経典「２．毒矢のたとえ」と「３．象の足跡のたとえ」、および「ミリンダ王の問い」
ねらい：(1) 仏教は、受容する時代と文化に応じて大きな変化を遂げたが、その思想の原点はどこにあったのか？(2) 三つの資料は、人間と環境世界との関係をどのように理解し、描いているか。それぞれの特色及び立場の相違点を比較する。(3) それらの相違にもよらずに共通する原始仏教の根本思想をつかみ出す。
☆比較的少量の資料を精読していただきます。
【読書案内】
①毒矢のたとえ：「・・・という考え方があろうと、まさに生まれることはあり、老いることはあり、死ぬことはあり、悲しみ・嘆き・苦しみ・憂い・悩みはある。」（＝人生は苦である）と世尊が言うのはなぜか、何のためか。
②世尊はどのようにして苦が生起すると教えているのか。また、どのようにしたら苦を制圧できると教えているのか？そのロジックの枠組みをまとめなさい。（いわゆる「四諦」）
③「存在なくして名辞あり」という命題は、苦の制圧という世尊の教えにとってどのような意義を持つのか。
④生成消滅するすべてのもの（人間を含む）は、そのプロセスにおいて同一のままでもないし、別物でもない、といわれるが、そのような命題は、苦の制圧という世尊の教えにとってどのような意義を持つのか。
☆原始仏教において、人間と環境世界との関係のどのような面が強調されているか。

[2] 墨子・荘子
メイン資料：世界の名著『老子・荘子』より「荘子」（内編）および『諸子百家』より「墨子」。
ねらい：ともに、孔子の「論語」を意識した対極的思想であるが、それぞれどのように孔子を超えようとしているか（成功しているのか、いなか、を問うよりもむしろ、孔子を超えようとさせた背景にある文化史的・社会史的制約は何かを考えて頂きたい。）ここでも、人間と環境世界との関係がどのように理解されているのかが焦点となります。
☆こちらは、ある程度の量の文献を効率的にこなして頂くことになります。
【読書案内】
①墨子の主張する能力主義（宿命の否定）と、天（天子）への服従という二つの立場は、（単なる墨子の思考矛盾と決めつけない場合）どのような意図で提示されているのか。人間と環境世界との関係というコンテクストで考えよ。
②荘子の主張する天と人との関係は（道に従う境地では）どのようなものか。人間と環境世界との関係というコンテクストで考えよ。

[3] インド・中国
　最後に、インドと中国というアジア文化の二つのルーツの共通点、相違点を、人間と環境世界との関わりという視点から、とらえてみましょう。とくに、人間環境、社会環境、自然環境がそれぞれどのように環境世界のモデルとされているか。またその帰結はどのようなものか。
　さらに、日本文化史に及ぼした影響、西欧市民社会を受容した近代日本に、アジアの文化伝統が果たす意味などをグループに分かれて討議し、報告書にまとめる。

（書き込み時刻）29 Sep 1997 19:20:31

生島卓也 <t-i@mars.dtinet.or.jp>
表題：「「日本の思想」第１章　読書案内」
コメント：生島です。大変遅くなって申し訳ないのですが、「日本の思想」１章の
読書案内を載せます。今からでもある程度目を通してもらえればと思います。
当日紙でも配布はします。

予定としては一日目の朝に比較的読みやすい３、４章をその場で読んでもらい、
そこで挙がっている問題点から考え始めようと思っています。（読書案内も配り
ます）

二、三日目に「日本の思想」１章、「タテ社会の人間関係」、「「いき」の構
造」「「甘え」の構造」の内容を押さえ、討論中心のまとめへ持っていくつもり
です。

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丸山真男『日本の思想』岩波書店　1961年　　　　　

第１章　日本の思想

【要約的読書案内】
文責：松原

「日本の思想」を考えたとき、「思想」が歴史的に構造化されない状況に出会
う。時間的な構造化に対して空間的な構造化と表現できるような「思想の断片」
群の空間的配置転換の順序がただあるだけではないだろうか。こうした点を日本
人の内面生活における思想の入りこみかたから考える。どのような歴史的状況の
なかでそれぞれの「思想」が流入し、「断片化」され留められてきたのか。「伝
統」と「外来」のように表現されるとき、「思想」が歴史的構造性や歴史的前提
が解体されるときなどを考える。また、そうして歴史を受けての日本の近代化は
どのように行われたのか。「フィクション」と「製作者」との関係、「フィクシ
ョン」と「現実」の分離と緊張。近代化の進行のなかで生まれた思考様式の使い
分け。そういう日本でのマルクス主義の思想史的な意義は。

【読書案内】
文責：生島

1　丸山の言う日本の思想において特徴的なのはどういうことか？

2　「伝統」思想と「外来」思想との間にはどのような違いがあるか？

3　日本人の思想継起の仕方はどういうもので、継起された思想はしばしばどの
ように接合されるか？

4　思想の批判や評価にはどのような「伝統」が見られるか？

5　近代日本の機軸となったのはどんな体制か？

6　明治憲法が欽定憲法でなければならない所以はどこにあるか？

7　ヨーロッパで近代国家形成にあたって重要なのはどんな点であったか？

8 　「自然状態」への密着は日本の近代化の中でどんな状態を引き起こしたか？

9　日本におけるマルクス主義にはどんな思想史的意義があるか？
（書き込み時刻）23 Sep 1997 16:40:29