フロイト『精神分析概説』

『原典による心理学入門』南博著(講談社学術文庫)

担当者:関戸岳彦、江西千歩


 「精神分析概論」

 〜第1章〜

(1)エスとはどういうものだとフロイトは定義しているでしょうか。

  p.542中  「この精神装置の中で〜本能である。」
    p.542末行-p.543 「われわれの周囲〜名称を与える。」
  p.543後半  「内界に対して〜決定する」
 
   江西の解答:【エスの定義】
p.542  「この精神装置についての知見が獲得されたのは、人間の個人的発達の段階が研究されたことによってである。この精神装置の中で最も古い精神的区画、又は「場」をわれわれはエスと呼ぶ。エスの内容はすべて遺伝され、出生のときに既にその個体が持って生まれ、体質的に決定されているものである。つまりそれは身体組織から発生したさまざまの本能、ここにおいてはじめてわれわれに不明な形で一つの精神的表現を見出す本能である。」
【比較】
p.545  「エスと超自我とは、いかに基本的な相違を示すものであるといっても、ひとつの一致点を示している。即ちそれは両者共過去の影響を代表しているものであり、エスは遺伝されたものを表し、上位自我は主として他者から引き継いだものを表している。」
【比較】
p.545末〜「エスの力は個々の人間に固有な生活上の志向を表現している。その生活上の志向とはその人が持って生まれた要求を充足することにある。ところで、エスには寿命を保ったり、不安によって危険を防衛したりする目的はない。この任務は自我が果たしている。自我は外界を顧慮して、満足を得るのに最も好都合で最も危険のない方法を捜し出すのである。超自我は新しい要求を主張することがあるかもしれない。しかし超自我の主要な仕事は、エス及び自我とは反対にむしろ本能満足を制限することにある。」
 

(2)「上位自我」はどんなものとされていますか。

  p.544  「長い幼児期を通して〜ならないのである。」
  p.544 末「自我と超自我の〜」→p.545「〜受けるのである。」

 関戸の解答:人間は、その長い幼児期間を両親に依存して生きていて、この期間の両親への依存性は、この時期の沈殿物として彼の自我の中に両親の影響が継続される1つの特別な「場」を形成する。これが「上位自我」と呼ばれるものである。また、自我と超自我の関係の個々のものは、全て幼児の両親に対する関係に還元することによって理解できるとしている。両親の感化の中にはもちろんその家族、民族、種族の習慣の影響も作用している。また、超自我は個人の成長過程において彼が尊敬する理想の人物などによっても参与を受ける。超自我は動物によっても、人間の場合のように、長い幼児的依存の時代がある場合には必ず認められ、同時に自我とエスの区別が必然的に認められる。(動物心理学)
  →上位自我(=超自我)は本能満足を制限する役割を持つ。
 

(3)エスと超自我の共通点は?

  p.545  4-7行目 「エスと〜表している。」

 解答:エスと超自我とはいかに基本的な相異を示すものであるといっても、一つの一致点を示している。即ちそれは両者共過去の影響を代表しているものであり、エスは遺伝されたものを表し、上位自我は主として他者から引き継いだものを表している。しかるに、自我は一般に自己自身が体験したものすなわち偶然的なもの及び現実的なものによって限定されるのである。

                    現実・環境の要求
                       ↓    
     エスの要求(遺伝されたもの)<--> 自我の行動・形成 <--> 超自我の要求(他者から引き継いだもの)
                       ↓←自我の積極性(外界を合目的的なやり方で変化させる。)
                     現実・環境


 〜第2章〜

(1)フロイトによる人の二つの基本本能「エロス」と「破壊本能」は
   どのように定義されているでしょうか。

  p.546-547「ところで〜できよう」

 江西の解答:
【本能】p.546「エスの要求緊張の背後に認められる力を我々は「本能」と呼んでいる。本能は精神生活に表現された身体的要求を意味する。それは一切の精神活動の最終原因であるが、その性質は保守的である。個人が到達した状態からは、その状態が放棄されるや否やすぐにそれを再建しようとする傾向が起こるものである。更に我々は実際上いくつもの本能を区別できるし、また長年の習慣によってもそれらを区別している。それゆえ、我々にとってはこの多種多様な本能のすべてを2、3の基本的な本能に還元することができるかもしれないという可能性は非常に意義深いものである。我々は本能が移動によってその目標を変更することができるし、また互いに変換しあうこともできる、すなわち一つの本能のエネルギーが他の本能のそれに転化することができるということを経験から知っている。」

「ところで我々は〜二つの基本本能、『エロス』と『破壊本能』を認めることを決心した。」

【エロス:まとめ】
  目的「結合」次第に大きくなってゆく統一体を作り出し、これを維持継続すること
  含:自己保存本能vs種族保存本能、 自我愛vs対象愛

【破壊本能:まとめ】
  目的「破壊」結合を解消し事物を破壊すること
  最終目的は生物を非生物状態に還元すること、死の本能
 

(2)「エロス」と「破壊本能」はどのような関係があるとされていますか。

  p.548  「基本本能の一つ〜という風に想像される」

 関戸の解答:エロスと破壊本能は人間の2つの基本本能である。エロスの目的は一言でいえば結合であり、次第に大きくなっていく統一体を作り出し、これを維持・継続することにある。また破壊本能の目的は、反対に結合を解消し、事物を破壊することにある。
  これはまた、「死の本能」とも呼ばれる。(←破壊本能の最終目的は生物を非生物状態に還元することにあるように思われることから。)生物学的機能のなかでは、この2つの基本本能が相互対立的にまたは結合的に作用している。(食事、性行為) 
 

(3)自己破壊はどのように起こるとされていますか。

  p.548末「破壊本能が〜」→p.549 「〜死滅するのである。」

 解答:破壊本能が内部で死の本能として作用している間は、この本能は沈黙している。それは破壊本能として外界に向かったときにはじめて姿を表すのである。このように破壊本能が外界に顕在化して現象となることが個体の維持に不可欠なことのようである。筋肉系統は、この目的を遂行する器官である。超自我の発生と共に、自我の内部にかなりの量の攻撃本能が固定化し、内界で自己破壊的に作用する。この状況こそは、人類が文明発達の途上において、身に受ける健康上の危険の一つである。攻撃性を抑制することは一般に不健康であり、病気を惹起するように(有害に)作用するからである。人間は外界に解放することを妨害された攻撃性の変形を、自己自身に攻撃性を向け換えることによる自己破壊の形で表現する。もしその人が激しく立腹して頭髪をかきむしったり、自分の顔を拳骨で打ちのめしたりした時には、明らかに彼はこの行為を他人にやりたい気持ちがあったのである。自己破壊の一部分はいかなる事情のもとでも内界に残存して、個体を破壊するのに成功する。このような自己破壊は、リビドーが費やされてしまったか、利益にならない形で内界に固定化されるかいずれかの場合にはじめて成立する。そこで一般に次のように推定することができる。個人はその内的葛藤によって死滅し、種は外界がある方法で変化し、種によって獲得された適応性がこの変化した外界に対して役立たなくなってしまうような、外界に対する無意味な闘争によって死滅するのである。


 〜第3章〜

(1)当時の常識に反して、注目と非難を浴びた、フロイトによる新たな主張は?

  p.551-552  「従来の〜しばしばである」

 江西の解答:
p.551第三章 性的機能の発達
「従来の見解に従えば、人間の性生活とは主として自己の性器と異性の性器とを接合させようとする働きである。接吻とか異性の身体を眺めたり手に触れたりすることとかはその際の随伴現象であり、性交の先駆行為として現れるものである。そのような傾向は思春期になって、性的成熟に達する年齢になると必然的に出オ’修糧・・・w)「従来の見解に従えば、人間の性生活とは主として自己の性器と異性の性器とを接合させようとする働きである。接吻とか異性の身体を眺めたり手に触れたりすることとかはその際の随伴現象であり、性交の先駆行為として現れるものである。そのような傾向は思春期になって、性的成熟に達する年齢になると必然的に出現して、生殖作用に役立つものであると言われている。ところが常にこのような認識の狭い枠にはめこまれないような幾つかの特殊な事実が知られているのである。・・・」
  ・同性愛  ・倒錯者(性器を用いない) ・子供の性的興味

p.552「a 性生活は思春期になってはじめて開始されるものではなく、出生後まもなく認められる明瞭な現れを以ってはじまる。」

p.552後半「ところで主要な関心が向けられるのは、いうまでもなく第一の主張aに対してであって、この主張はすべての人々にとって思いがけない主張である。ただ古くからの偏見によって性的という名を与えることを拒まれてきたにすぎないような身体的活動の徴候が早期幼児期に存在することは明らかである。」

「〜性生活の二相性に到達した。(p.553)」
 



 【提題】 1、みなさん!タナトスについて前向きに考えてみましょう!! by 江西
      2、利己的遺伝子とフロイトのエロス・タナトスの関係について
        また、タナトスとインドにおける破壊神の存在について


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