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フェミニストは、男性による女性支配こそが人間の自然支配の根元だと捉えてきた。そして、家父長制社会が搾取の基盤の前提となっていると考え、この人間の抑圧の原型を取り去れば他の形の抑圧も同様に無くなるのではないかと、フェミニズムと環境保護主義を結び付けて考えたのがエコフェミニズムである。つまり、女性と自然とはどちらも自己中心的な家父長の客体であると捉えた訳である。そして、大地に表される生命を生み出す源を女性と喩え、女性的な自然環境を見直そうと考えるのである。
フェミニストの中には、女性だけの文化を明確にし、男性文化への挑戦を選ぶ立場を取るものもいる。これは女性と自然の同一視を歓迎し、人間よりも自然こそが大切だと考えている事である。だが、このように主張することこそ、彼女らが批判する男性的な支配から脱していないのであり、家父長性の構造を今度は女性が代替しただけである。けれども、長いこと続いてきた男性支配の構造に対し、社会に強いメッセージを投げかける意味で、攻撃的な主張をすることは必要だったかもしれない。
エコフェミニストによる主張;
人類すべてが優しさと他者を思いはかるという人間の特質を養ない、愛情の上に世界を作って行かなくてはならない。大切な事は、古い二元論的な考えに対し、自発的に融合を計ることである。それは、男性が優位なのか女性が優位なのかという考え、短期的な政策かそれとも長期的な政策が必要なのか、直感的なものと科学的なもの、神秘的なものと合理的なものという、あらゆる認識の方法を踏まえることである。世界とは多様性を認め、違いを楽しむものである。人と自然や男性と女性の相互依存の安定に一番の価値を置く世界にして行こう。
評価
環境問題をフェミニズムの立場から見、男性による女性支配が人間による自然支配の根源になっていると捉えるのがエコフェミニズムである。人間環境における男性による女性支配という現実が、実は人間が自然を支配する根元的理由であるとする事を証明した。それは、自然環境とは人間環境の現れであるという異なる視点で環境問題の原因を探ることを導き出したわけである。
エコフェミニズムは「他に対する思いやり」や「心と愛のコミュニティーを備えた政治」の必要を説いている。そしてこれらが具体的に何かを明確に示してはいない。だが、それを突き詰めていく事は、それこそ女性的な調和を解くことから逸脱する。エコフェミニズムは現状に対する批判を持っているのであって、それ以上の思想ではない。物の見方の多重性を見直そうとすることがこの思想の結論である。