成長の限界




D.Meadows et al, The Limits to Growth (London : Pan Books, 1983)

万仲龍樹
 産業革命以降、工業が急速に発達し、鉄鉱石や石炭などの天然資源の利用は加速している。また同様に世界人口もこれまでにない速度で増加し、天然資源の利用速度の加速を促している。しかし、そのような終わりのない規模の拡大はいつまでも続くわけではない。地球はその大きさが決まっており、それにしたがって利用可能な資源量や食料生産などの人口支持力などにも限界がある。にもかかわらず、われわれは際限のない成長を求める。
 だが、そのような成長から均衡へ人びとの考えを変えることは可能である。また、その際に、地球上の人びとが基本的物質的ニーズを満たし、公平な機会をもつことも可能である。
 ここでいう均衡的な社会への変革とは、リサイクルなどを推し進めるというようなうわべのものではない。リサイクルは資源消費を減らす手法となりうる場合もあるが、多くはコストがかかり、非生産的である。したがって、ここでの変革とは人びとが物質の所有や消費を最大化することで満足を得る、という現在の思考方法そのものを問うのである。

<評価>
 「これまでわれわれは自然や資源に対して無反省的であった。換言すれば、資源を採取するだけ、廃棄物を出すだけ、という一方的な関係であった。しかし、社会は環境に密接な関係であり、その両者を分断して考えることはできない。」ということを指摘。問題発見はかなり具体的なものであるが、提示する問題解決は理念的である。

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