万仲龍樹
近代において、人間と土地の関係は支配者と被支配の対象と考えられる。なぜならば、人間にとって土地は極めて経済的なものとなっているからだ。われわれは土地を農作物がとれるもの、様々な天然資源を入手するもの、排出物を出すところ、と考える。また、教育は土地から人間が離れていく傾向をさらに助長する。というのも、そこには生態学的アプローチ、いいかえれば人間は生態系の一員であり、決して支配者ではないことを人びとに学ばせることがないからである。。そのような状況で、人間による土地の搾取が進み、自然環境破壊が起こるのである。ここでの土地とは、単純に「地面」を指すのではない。土、水、植物、動物、それらの集合体を土地とよぶ。つまり、土地とは生態系そのものを指す概念なのである。
この支配−被支配の構造は人間にとって土地を共同体の一員として、権利主体として考えることをできなくしている。しかし、個人と個人、個人と社会の間に共同体が広がってきた以上、それが個人と土地にまで広がらないという必然性がない。つまり、人間と土地の間にも倫理が成立しうるのである。それによって人間の自然に対する態度が支配的なものではなく、共生することができるのである。この拡張の端緒は直感的なものであるが、生態学的な裏付けを考えると理論的なものである。
<評価>
人間と自然の関係を、支配−被支配関係ではなく、共生関係と考える。その際に、「権利」というこれまで人間に認められてきたもののすそ野の拡張によって実現しようとする。しかし、この考え方は近代の自然観を乗り越えようとしているが、権利という近代の価値観の中に組み込もうとする点で、近代性を維持しているといえる。
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