(8)「今後物質は、最終的には、優越した内在的力や隠された属性といった幻想無しに支配されなければならない。」
「神話は啓蒙へと移行し、自然は単なる客体となる。人間は、自己の力の増大を図るために、彼らが力を行使するものからの疎外という代価を支払う。啓蒙が事物に対する態度は、独裁者が人間に対するものと変わる所はない。独裁者が人間を知るのは、彼が人間を操作することができる限りである。科学者が事物を知るのは、彼がそれらを制作することができる限りである。それによって即自的な事物は、彼にとって対自的なものとなる。この転換お打ち出、事物の本質はいつも、普遍の同一のもの、支配の基体としてあらわになる。この同一性が自然の統一をかたちづくる。」
「啓蒙は通約しきれないものを切り捨てる。単に思考のうちで質的なものが消失するだけでなく、人間は否応なく現実に画一化されていく。」
テオドール・W・アドルノ マックス・ホルクハイマー『啓蒙の弁証法 1啓蒙の概念』