(4) 自由の変遷
古代ギリシャにおいて、自由とはまず、奴隷状態にないこと、自由人であることを意味しまた外国の支配や、専制君主の支配下にないポリスの一員であるという政治的状態をも意味した。人間としての人間が有するものではなく,あくまでもポリスや家等の社会関係を前提とした、自由人の自由であり、ポリス市民の平等は人間の平等ではなく、奴隷への支配は自由人の自由と矛盾するどころかその前提であった。その意味で自由は、権力の不在や権力からの開放ではなく、自らが自由でありうるような権力の保有やそれへの参与を意味したのである。したがって、古代の自由は共同体からの干渉の排除を主たる内容としていたわけではない。
その後の近代人に自律として認識される自由に関する考察
「何でも好きなことができる」というのは一体、限界を持たない自由というものになりうるのだろうか。なりえないと考える。なぜなら、何でも好きなことを「する」という制限が設けられているからだ。そのひとは、ものごとを、「しなければ」自由だと感じられない、という制約を課せられている。「する」という基準でしか測れない自由なのだ。限りがない状態ではない。