(1) 社会科学の論理より
合理批判主義的な視点は世界を既に知っていることと未だ知らないことの二つに分割し、既得の知識によって世界をその時その時の目で捉えようとする。ある時点において知らなかったことはその人にとってはその存在を予想することすらできなかった物である。このような状況であるにもかかわらず、それを、わからないことは存在するとして予期していたと主張することは、たいして意味がないというよりむしろ時として有害であろう。人間は見える物しかみないというのなら、見えないもの、未だ知らないものという名称を与えた時点でなんらかの範囲の絞り込みが行われており、そのような意味で知ってしまっているのである。 世界を二分割するという行為を行ってしまっているということを、我々は認識することができる。既に知っていることと未だ知らないことの二つにである。それはそのような世界観であるとされた時点で世界を自分の知っていることだけで捉えようとする行為の一種にすでになっている。まったくもって謙虚な姿勢とは程遠いものである。