[8] 構造主義に関する文献は多いが、ピアジェの構造主義に言及している文献はそれほど多くはない。上野千鶴子は『構造主義の冒険』(勁草書房 1985)の最後で、ピアジェの構造主義による社会研究の可能性を以下のように指摘している。「ピアジェがすでに自ら解答を出しているように、われわれは社会科学における「発生的構造主義」を展望することができる。それは、構造主義と歴史主義の皮相な対立を越えたところにある。そして発生的構造主義とは、前述してきたように構造分析と構造発生論−すなわち諸構造の間の弁証法と、構造の非構造との間の弁証法−の総合によって得られるものなのである。」(p 230)ところで、引用した個所ではピアジェの構造主義を「発生的構造主義」と呼んでいる。これは同じく構造主義の第一世代に挙げられるレヴィ・ストロースの「非発生的構造主義」との対比されるからである。確かにピアジェの構造主義は、構造の時間や歴史、発生の問題を扱っている点に特徴があるのだが、本稿では、それ以上に操作主体を取り上げている点に着目し、呼び方を「操作的構造主義」に統一する。