鎌田ゼミ・長嶋個人ページ3

アダム・スミス－国富論－

目次

1. 分業・労働
2. 資本
3. 資本の投下
4. 貿易
5. 公共財・租税

C・バーナードとの対比

＜その人間観によって、バーナードはA・スミスと対比されることがある。スミスは「経済人」仮説をとることによって経済学を構築した。バーナードは、経済人仮説に代わる全人仮説―非経済的動機をも併せ持ち、限られてはいるが合理的な選択力、自由意志を持って行動する人間像―によって、その理論を体系づけた。今後の社会科学が新しいい人間仮説にもとづいて構成されるべきであるとすれば、「（バーナードの）この書は、経済人の社会の曙に立つものとされるアダム・スミスの『国富論』になぞらえるべき地位を、後代にいたって獲得するかもしれない」（三戸公氏）。＞　（引用　「バーナード　経営者の役割」p4　飯野春樹　編　有斐閣新書　1979）

第一篇

1. 分業による生産力の増進を導く３つの事情を挙げよ。（1章）

個々の職人すべての技能の増進
分業による作業の単純化により、職人の技能が大幅に向上し、結果として一人の職人の生産する量も増大する。P16
ある種の仕事から他の仕事へと移る場合にふつう失われる時間の節約
一人で、ある種の製品を完成させる場合においては、多くの作業をすることになる。そのため、ひとつの作業に集中することが困難になり、結果として能率が下がることになる。P17
労働を促進し、短縮し、しかも一人で多くの人の仕事がやれるようなさまざまな機械の発明
分業によって、ある一つの作業に費やされる時間が増大することで、そこで働く者はさらに、その作業を簡略に手早く行う方法を考えるようになり、結果としてそこで使われる機械の改善がすすむ。P18

2. 分業とはすなわち、個と個による協働である。この協働はスミスいわく人間のどういう性質からおこるのか。（2章）

人間は、常に互いの助けを必要としており、その助けを得るために、相手が必要としているものを提供する。この相互交換による協力は、各人がもつ自愛心＝利己心からきている。P26

3. 労働者と支配者の関係を考えなさい。（5章）

労働者は、その労働に見合った報酬を受けるという契約のもとで、その雇用者に雇われる。つまり、雇用者は、労働者に対してその労働に見合った報酬を与えなければ、労働者を得られない。労働者と雇用者は対等であるといえる。

4. 商品の真の価格、名目上の価格を答えなさい。また、その理由を答えなさい。（5章）

真の価格－労働
ある商品について、その製造に多くの労働が費やされるものは高価であり、わずかの労働で入手できるものは安価である。つまり、その商品の真の価値尺度となるのは、労働である。P57～p58
名目上の価格－貨幣
貨幣の価値が変動すれば、その商品の価値も変わることになるため。P59

5. 商品の価格を構成する3つの要素を答えなさい。（6章）

地代－その商品を製造する土地にかかる費用
賃金－その商品を製造する労働者にかかる費用
利潤－企業者の利潤　p85

6. 賃銀によって生活する人に対する需要を増加させるものは何か。また、何故そういえるのか答えよ。（8章）

企業者が自分の生活を維持するのに十分である以上の資本を獲得した場合には、彼が生産する商品でより多くの利潤を得るために、自然にその余剰で労働者の数を増やす。つまり、収入と資本が増加すれば、必然的に労働者の需要は増加する。また、収入と資本の増加は国民の富の増加であり、この国民の富の増加なしでは、労働者の需要は増加しえない。P118

7. 労働の賃銀を増加させるものは何であるか。（8章）

社会全体として生活必需品が安価となったとき、企業者にとって、その使用人にかけれらる基金が増加し、より多くの者を雇用し、商品から得られる利潤の増加を期待する。結果、労働者に対する需要は高まるが、その需要を満たそうとする人の数は減少する。そのため、労働者獲得のため、雇用者は賃金を引き上げることになる。p141
雇用者の間におこる労働者獲得の競争。p151

8. 労働の賃銀が高まり、資本の利潤が引き下がる原因は何であるか。また、その逆の状況を引き起こす原因も答えなさい。（9章）

大資本の雇用者の需要に対する労働者の不足が雇用者間に労働者の獲得競争を起こし、結果高い報酬を支払わなければ多くの労働者を得ることができなくなる。それにより、資本の利潤は引き下がる。逆に、十分な資本のない雇用者が必要とするよりも多くの労働者がいる場合、つまり労働者に対する需要に対して、その数が多い場合、労働者間に仕事をめぐる競争が生まれ、より安く自分の労働力を売ろうとする。結果、労働の賃金は下がり、雇用者の資本の利潤は高まる。P151

9. 労働の賃銀も資本の利潤も低いという状況はどのようにして起こるのか。（9章）

「一国の国土によって維持され、またはその国の資本によって雇用される程度以上に人口が満ち溢れている国では、職業をもとめる競争が必然的に激しくて、そのために労働の賃銀は労働者の数をやっと維持するにたるところまで引き下げられるであろう。またその国は、すでに人口が満ちあふれているのであるから、労働者の数はけっしてそれ以上増加するはずもないのだろう。その国で営まれるべきすべての事業に比して資本がありあまる国では、事業の性質と規模がゆるすかぎり、大量の資本がすべての個々の部門で用いられるだろう。それゆえ競争は至るところで激しくなるだろうし、またその結果、通常の利潤はぎりぎりまで低くなるだろう。」p159

10. 賃銀はどのようにしてその額が決まるのか（10章）

「第一に、職業自体が快適であるかないか。第二に、それらの職業を習得するのが簡単で安上りかそれとも困難で費用がかかるか。第三に、それらの職業における雇用が安定しているかいないか。第四に、その職業に従事する人達によせられる信頼度が大きいか小さいか。第五に、そうした職業において成功する可能性があるかないか」p166

第二篇

1. 社会の総資財を3つに分類しなさい。（1章）

直接の消費にあてられる部分　（p427）
固定資本　　　　　　　　　　（p429）
流動資本　　　　　　　　　　（p430）

2. 固定資本を構成する4項目を挙げよ。（1章）

労働に有用な機械などの用具
営業用の、つまり利益をあげることのできる建築物
改良された土地
社会の全住民または全成員が獲得した有用な能力

3. 流動資本を構成する4項目を挙げよ。（1章）

貨幣
食料品のストック
生活必需品などの原材料
消費者の手に渡っていない生活必需品などの商品

4. 一国の全住民の富は、純収入に比例する。純収入を説明せよ。（2章）

固定資本、及び流動資本から維持費を差し引いたあとに手元に残り、自由に処分できるもの。P437

5. 生産的労働と不生産的労働の違いを答なさい。（3章）

生産的労働は、その労働を投じたものの価値を増加させ、不生産的労働は、そのような効果を生まない。P515

6. 国民の勤勉と怠惰を決定し、その富を増減させるものは何であるか。また、何故そう言えるのか。（3章）

「資本と収入との比率は、どこでも、勤勉と怠惰との比率を左右するように思われる。資本が優勢なところでは勤勉が広がり、収入が優勢なところでは怠惰がはびこる。それゆえ、資本が増減するたびに、勤勉の実際の量、すなわち生産的労働者の数は自然に増減する傾向があり、またしたがって、その国の土地と労働の年々の生産物の交換価値、その国の住民の真の富と収入は自然に増減する傾向がある。」P528

第3篇

1. 資本の投下の自然的順序とはどのようなものであるか。

農業→製造業→外国貿易という順序をとる。
農業における余剰生産物による利潤で都市部における製造業が発達し、その原料調達を国外に求めることで外国貿易が栄える。P4～5

第4篇

1. 外国貿易がもたらす利益を挙げよ。（1章）

余剰生産物を輸出し不足な必要物資を輸入する。
労働の生産力を高め社会の真の富を増加させる。P106

2. 輸入に対する制限２つと輸出に対する奨励策４つを挙げよ（1章）

制限p113

度の国から輸入されるかを問わず、自国で生産できるような国内消費用の外国品の輸入に対する制限　（2章）
貿易差額が不利になると思われる特定の諸国からの、ほとんどあらゆる種類の財貨の輸入にたいする制限　（3章）奨励策p114

戻し税　（4章）
奨励金　（5章）
有利な通称条約　（6章）
植民地における特権　（7章）

3. 重商主義が引き起こす矛盾とは何か。（8章）

重商主義政策とは、国の富を増大させるためにとられている。国の富はまた、諸国民の富であり、その富を増大させる目的は、より優れたもの、より有益で安価なものを買うこと、つまり消費することにある。しかし、この重商主義における政策（上記問第2）は、生産者の利益は誘導しても、その商品を消費する側には、なんの便益をもはかっておらず、生産者の限りない利潤を求めている。P464

第5編

1. 常備軍はどのような状況のもとで自由を擁護するのか。また、ここで言う自由とはどういうものであると思われるか。（1章）

「自分自身、民政権の最大の分け前にあずかっているがゆえに、軍事力が、民生堅を維持することに最大の利害をもつ人々の指揮下に置かれているところでは、常備軍は自由にとってけっして危険なものたりえない。」p28

2. 司法権と行政権を分けるべきであるという理由は何であるか。（1章）

私人の権利を行政の利害の犠牲にするということが起こらないように。また、行政権を有する者への配慮等で裁判の不公平を生まないように。P53

3. 公共財の管理について、私人にまかせてよいものと公にまかせるべきものとの相違点を考えてみましょう。（1章）

公共財の建設費及び維持費について、その設備の整備をしなければ、そこを利用する者が減り、費用をまかなえないものは私人にまかせてよい。一方、一度建設し、使用料を設定してしまえば、その整備のいかんを問わず、人々がその設備をしようせざるをえないようなものは公にまかせるべきである。P58

4. 有料道路等の公共財から得られる使用料を国の一般財源に回すべきでないのは何故か。（1章）

第一に、国の一般財源にひとたび回してしまうと、国の財源が十分でないときに使用料を値上がりされる恐れがある。第二に、そこを使用するものにかかる料金は、そこを通る者の貧富ではなく、荷物等の重量によるため、そこを使用するのにかかる以上の料金は、税としては、不公平なものとなる。第三に、公共財の使用料は、その維持費にあてられるべきものであるはずが、一般財源にまわされることにより、本来の維持費としての用途に使われなくなるおそれがある。

5. 合本会社とは、どのような会社をいうのか。（1章）

国王の特許状によるか議会の条例によるかして設立される。各社員は、自分の持分の払い戻しを会社に請求できないが、会社の承認の有無にかかわらず自分の持分を他人に譲渡し、それによって新しい社員を加入させることが出来る。合本資本における持分の価値は、それが市場で売れるであろう価格である。つまり、各社員が共同資本に対して持っている債権もその市場での価格に左右される。次ぎに、会社が契約した債務に対して、社員は、自分の持分である債権分の義務を負う。P82 また、これらの会社は、その事業において排他的特権なしでは成功しえない。なぜなら、その取締役を担う人々は、同業を担う個人の投機商人との競争に耐えうるだけの才能がないため。P104

6. スミスいわく、合本会社として排他的特権なしにうまく営業していけるのはどのような事業であるか。（1章）

銀行業・保険業・運河事業・水道業の４つ。いっさいの仕事において、その内容が画一的なもの。P106

7. 国が国民を教育しなければいけないとするのは何故か。（1章）

分業の発達により、国民はその生涯でごく限られた作業にのみ従事するようになる。ここで、スミスは、人間の理解力は普段従っている仕事によって必然的に形成されるとし、つまり、分業による単純な作業でその生涯をおくる国民の理解力の低下を懸念している。国民の理解力の低下は、国家の利害が国民の利害に結びつくことをもわからなくなるという事態を引き起こし、国家の存亡に関わってくるため。

8. 主権者または国家に属する資本及び公有地がかかえる問題とは何か。（2章）

国有の資本及び公有地はそれらを維持する経費をそれ自体で賄うことが出来ない。そのため、それら経費を国民からの租税に頼らざるをえないが、一方でそれら資本及び公有地はなんの生産的効果もあげていない。P219

9. 租税の4原則を挙げよ。（2章）

公平P221
租税は、地代・利潤・賃金の三種の収入すべてに公平にかけなければ不公平を生む。
明確P221
徴税人の独断により生じる不公平を防ぐため。支払いの方法・時期・額を明確にする。
納税の便宜P222
消費者にとって都合のいい時期及び方法をはかる。
徴収費P222
租税の徴収にかかる費用がかさめば、それにより本来国が必要とする以上の租税を国民にかけることになる。また、その徴収方法も、国民の生産活動に支障をきたせば、生産を減らすことになるため、これらの事態はさけなければならない。

10. 資本から生じる収入のうち、利潤には課税すべきでないとするのは何故か。（2章）

まず、個人がもつ資本というものは、変動的なものでありそこから生じる利潤についても変動的であり、そのつど一人一人の資本を計算し課税するのは、制度化するには無駄が多い。また、個人がもつ資本の総額も明確にはかることが困難であるため、課税額を割り出しにくい。次ぎに、利潤は、資本を運用する者の報酬であり、そこに課税することは、資本の運用を抑えることになりかねない。P257

11. 労働の賃銀にかける直接税が起こす問題を挙げよ。また、それは何故起こるのか。（2章）

賃金に税がかかることにより、雇用者が支払う労働者への賃金が高くなり、雇用者が雇うことの出来る労働者の数が減る。また、雇用者が支払う労働の賃金の額を課税前と変わらない額にしたとするならば、労働者が得られる賃金の額が減る。前者の場合、生産にかかる費用の増大により、生産量が減少し、後者の場合、労働者の賃金の低下とともに消費量が減り、結果として産業の衰退・貧民の仕事口の減少・年々の生産物の減少を引き起こす。P290

12. 重い税が引き起こす問題とは何か。（2章）

商品の消費を減らしたり、密輸を奨励することがある。P320

13. 関税や消費税が多大な徴収費を必要とする原因を4つ挙げよ。（2章）

おおぜいの税官吏や内国消費税吏が必要となり、その経費が本来必要としている以上の経費を生じさせるため。P347
国内における消費及び生産を減らし、結果として、その収入にしめる税額、とくにその税のうち徴収にかかる経費が大きくなり、産業の衰退を招く。P348
密輸を奨励することになり、また、その密輸業者が税法により破滅させられた場合、その資本は、国家若しくは税務官の収入とされ、もともと生産的労働に使われていた資本は、不生産的労働にまわされ、社会全体の生産を減らすことになる。P350
これらの税のかかる商品を扱う商人のもとをその都度訪れる検査官への対応が彼らに、必要以上の労働をもたらす。P351

14. 公債の問題点は何か。

ここでいう問題というのは、国民にとっての問題点であり、国家にとっての有利な点である。国が普段の国家経営における以上の経費を必要とする場合、課税対象を増やしたり、税率を上げることは国民の感情を害する。そこで、公債を発行することで国民から借金するという形でその費用を得る。しかし、その費用を負担するの国民である。また、その公債返還に際しての財源を得るには結局、新たに税をかけるしかないが、国民を刺激しないためには、新たな公債の発行をうながすという悪循環がおこる。　　　p391

最後に

1. スミスの人間観とはどのようなものだと思われたか。

人間は、すべて己の幸福を追及するものであり、その行動はすべて彼らの利益に結びつくものである。

国の富とは、金銀を蓄積することでは得られず、その金銀で買うことの出来る財貨の蓄積による。また、これら財貨の蓄積は、国民ひとりひとりの富によっているのである。

参照・引用「国富論Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」　著作：アダム・スミス　監訳：大河内一男　中央公論社　1996

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