TipSheet(チップシート)を初めて使う方のための手引き  TipSheetの特徴とその活用 1.はじめに  聴覚障害学生の支援を目的に、大学の担当者と相談をする中で決まって出される問題があります。 (1)聴覚障害学生からノートテイクをつけてほしいといわれたが、どうすればよいのかよく分からない。 (2)支援担当になり企画を立てて上司に提案するが、なかなか理解を得られず困っている。 (3)教員に対して聴覚障害学生が受講しているため配慮をしてほしいと文書を渡したが、理解されていないらしい。 (4)ゼミに聴覚障害学生が参加することになった。聞こえる学生と一緒に授業を進めるための方法が分からない。 (5)友達の聴覚障害学生に頼まれてノートテイクをやっているけれどうまく書けない、方法が分からない。  このような「理解されない」「分からない」ことが、支援を進める過程で大なり小なり壁になっているようです。また、参考になる資料や専門書を探してみても、まだまだ事例は少なく、身近に入手できるものは十分ではありません。こうした現状をふまえ、高等教育の支援に携わる人々の疑問に的確に応えられるような手軽な資料を提供したいと思っているところで考案されたのが、PEPNet-Japan TipSheet(チップシート)です。 2.チップシートとは?  チップシートは、もともと聴覚障害学生支援の先進国であるアメリカの北東地区テクニカルアシスタントセンター(NETAC:ニータック)によって開発された資料です。NETACの本部は、ニューヨーク州ロチェスター市にある、ロチェスター工科大学内の国立ろう工科大学に設置されています。  初めて聴覚障害学生を支援していく者にとっては、目前の疑問や課題に対して解決につながるような知識や情報を早く入手しておきたいことでしょう。そこで、NETACは、聴覚障害、ノートテイク、手話通訳などの1つひとつのトピックを1枚ずつのシートに収めて、短時間で情報がえられるもの、TipSheetを作成しました。しかも、トピックごとに1枚のシートでまとめているので、これから聴覚障害学生支援を始める教職員や関係者の要望にあわせて、必要なトピックのTipSheetを選んでメールや郵送などで手軽に提供することができます。 3.NETACでの活用方法とその効果は?  NETACでは、各大学の支援コーディネーターから相談や要望などの連絡を受けて、必要なトピックのTipSheetをメールに添付送信したり郵送しました。それも、次のような助言も添えて。「これを読めば、貴方の知りたい事柄のポイントがすぐにおわかりになるでしょう」「このように活用したら貴方にとって支援業務がスムーズになるでしょう」。このおかげで、支援コーディネーターは、自分のニーズにあった知識を習得するとともに、どのような支援体制が必要なのかがイメージしやすくなり、全学的な支援体制の構築に向けてスタートすることができました。 4.日本版チップシートの活用方法  現在、PEPNet-Japan(日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク)では、日本版TipSheetの開発を進めています。これからも逐一新しいトピックのTipSheetを開発します。開発した日本版チップシートは全て、PEPNet-Japanのホームページから無料でダウンロードできます。  では、このようなTipSheetを効果的に活用するためにはどうしたらよいのでしょうか?第一に、自分自身が知識や情報を得たい場合には、知りたい内容が書かれてありそうなTipSheetを、タイトルや紹介文を読みながら探してください。本シートの裏面では、あなた自身の立場によって、どのTipSheetを読めばよいかを解説していますので、ぜひ参考にしていただければと思います。  第二に、聴覚障害学生支援を進める上で、周りの方々の理解を得たい場合には、その方の立場に合わせたTipSheetをお渡しし、読んでもらってください。この場合にも、本シートの裏面を参考に、何をおさえてほしいかを考えて、適したTipSheetを選んでください。  なお、TipSheetをご覧になったうえでもっと詳しく情報を得たい場合には、同ホームページのトップページにある、「聴覚障害学生支援FAQ」や、「聴覚障害学生支援書籍紹介」をごらんいただければ幸いです。聴覚障害学生の豊かな大学生活のために、本シートが有効に活用されることを願っています。 5.2007年8月までに開発したトピック (1)高等教育における聴覚障害学生支援 (2)聴覚障害学生支援の全国的状況 (3)聴覚障害 (4)聴覚障害幼児・児童・生徒を囲む教育環境 (5)聴覚障害教育におけるコミュニケーション方法 (6)情報保障の手段 (7)文字による支援方法 (8)手書きのノートテイク その特徴と活用 (9)パソコンノートテイク その特徴と活用 (10)高等教育における手話通訳 (11)手話通訳による支援 (12)通訳者の健康障害とその対応 (13)補聴援助システムの利用(作成中) (14)聴覚障害学生支援におけるコーディネート業務 (15)入学当初のサポート (16)学期初めのコーディネート業務 (17)障害学生支援の財源 (18)聴覚障害学生の心理的支援 (19)授業における教育的配慮 6.日本版チップシートの立場別活用方法 以下では、あなたの立場にあわせて、参照して欲しいチップシートをご紹介します。おさえて欲しい点に応じて、ステップ1から4に分かれています。以下は、チップシートの番号とタイトルです。なお、2007年8月までに開発したトピックを掲載しています。 支援担当職員の場合 ステップ1 聴覚障害学生支援に関する基本的な考え方を知る:1.高等教育における聴覚障害学生支援 ステップ2(1) 入学時に整えておくべき支援の内容を知る:15.入学当初のサポート、16.学期初めのコーディネート業務 (2)聴覚障害学生が個々に異なる心理状態にあることを知る:18.聴覚障害学生の心理的支援 ステップ3(1) 具体的な支援の方法を知る(支援の段階と情報保障者の健康管理について知る):6.情報保障の手段、7.文字による支援方法、8.手書きノートテイクその特徴と活用、9.パソコンノートテイクその特徴と活用、10.高等教育における手話通訳、11.手話通訳による支援、12.通訳者の健康障害とその対応 (2)支援の全体像と自らの役割を知る:14.聴覚障害学生支援におけるコーディネート業務 ステップ4 聴覚障害学生支援の運営体制について考える:17.障害学生支援の財源 大学教員 の場合 ステップ1 聴覚障害学生が受講する授業での配慮事項を知る:19.授業における教育的配慮 ステップ2 聴覚障害学生に配慮が必要な理由について理解する:1.高等教育における聴覚障害学生支援 ステップ3 聴覚障害学生に必要な履修上の配慮について考える:16.学期初めのコーディネート業務 聴覚障害学生の場合 ステップ1 自らの障害についての知識を得る:3.聴覚障害、4.聴覚障害幼児・児童・生徒を囲む教育環境 ステップ2 入学時に要望する支援の内容について知る:15.入学当初のサポート ステップ3 支援の必要性を理解し、他者に説明するための知識を得る:1.高等教育における聴覚障害学生支援、16.学期初めのコーディネート業務 ステップ4 さまざまな支援手段を知り、自分のニーズを確認する:6.情報保障の手段、7.文字による支援方法、8.手書きノートテイクその特徴と活用、9.パソコンノートテイクその特徴と活用、10.高等教育における手話通訳、11.手話通訳による支援 支援学生の場合 ステップ1 聴覚障害学生が支援を必要とする理由を理解する:1.高等教育における聴覚障害学生支援 ステップ2(1) さまざまな支援の方法について学ぶ:6.情報保障の手段 (2)文字による支援の方法について知る:7.文字による支援方法 ステップ3 聴覚障害学生のニーズにあわせた支援の方法を知る:8.手書きノートテイクその特徴と活用、9.パソコンノートテイクその特徴と活用、10.高等教育における手話通訳、11.手話通訳による支援 ステップ4 情報保障者の健康について理解し、自己管理できる :12.通訳者の健康障害とその対応 保護者 の場合 ステップ1 学生が使用しているコミュニケーション手段とこれまでの教育環境について整理する:4.聴覚障害幼児・児童・生徒を囲む教育環境、5.聴覚障害教育におけるコミュニケーション方法 ステップ2 学生の障害をきちんと説明するための知識を得る:3.聴覚障害 ステップ3 わが国における聴覚障害学生支援の現状を知る:2.聴覚障害学生支援の全国的状況 ステップ4 高等教育段階での聴覚障害学生の心理について学ぶ:18.聴覚障害学生の心理的支援 以下クレジット 発行 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan) URL http://www.pepnet-j.org 郵便番号305-8520 住所 茨城県つくば市天久保4-3-15 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター支援交流室 聴覚系WG 内 担当 白澤麻弓 E-mail pepj-info@pepnet-j.org 以下添書き PEPNet-Japanは筑波技術大学の運営による高等教育機関間ネットワークで、文部科学省特別教育研究経費を用いて運営しています。活動にあたっては、一部日本財団の助成によるPEN-Internationalからの支援を受けています。本シートは、アメリカ北東地域テクニカルアシスタントセンター(PEPNet-Northeast)の作成によるTipSheetを基に、PEPNet-Japanが独自に作成したものです。本シートの内容の無断複写・転載を禁じます。