5.「森」

 

森のことを知ったのは、森の総管理者?穂積純氏の編集した、いわば「森」卒業文集である『虐待と尊厳』を読んだ時。うんとクローズに、会員の体験を定期的に出した「つうしん森」を送る、というシンプルなものだけれども、会員はサバイバーだけではなく、家族・パートナーのサポートをしている人、そして虐待について学びたいと思った人(それも特に大学という機関に所属しているかどうかなど限らずに)と多彩であったのがすごく感動した。それまでに調べていたのって、当事者同士の結束といった感じだったから。

対象という意味で門戸が広かったけれど、「森」はとても閉じている世界だった。会員になるには、穂積氏に手紙を書いて毎回お伺いを立てる、という形がとられていた。つまり、ほとんど穂積氏のワンマン。だからこそ安心の出来た空間を作ることが出来たのだが、2001年9月をもって休業となってしまった。理由は穂積氏が自分の虐待体験を記した『よみがえる魂』『解き放たれる魂』を自身で英訳するためにアメリカに行くことになり、「森」を続けることが不可能になったからだ。

穂積氏本人が『虐待と尊厳』の中で『芽生えたばかりの人にとって後を追ってくるのは、もう遠すぎるのではないか』と指摘していた。きっとこういうのが「森」の中でも話されていたのかな、という想像でしかいられないけれど、確かに投稿者としては、次に投稿した話は必然的に続きになるだろう。また、前の話に影響を受けた人の発言もうまく意図を汲み取れないだろう。まさに『転換点』に「森」は無期限の休養をとることとなった。

 

今まで見つけたサバイバーを支える団体で、どれよりもいい形だと思っていた「森」は消えてしまったのだった。

 

HOME BACK NEXT