はじめに
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昨今、観光の新たな形態の一つとして「エコツーリズム」が注目されるようになってきています。しかしその内容はまだ広く人々に認知されるまでには至っていません。ここでは「エコツーリズム」の概念が生まれるに至った経緯を、まず観光の歴史から触れていきたいと思います。

観光の歴史は近代以前までさかのぼります。もちろんもっと昔から個人での観光旅行は行われていたでしょうが、観光が企業として成立したのは18世紀の後半のヨーロッパです。

当初は観光旅行とは王侯貴族や金持ちなどの支配階級の特権であり、庶民にとっては巡礼の機会などをのぞいて、ほとんど観光旅行は不可能であったといわれています。

しかし19世紀半ばになるとヨーロッパでは産業革命の成功により庶民の所得にある程度のゆとりができはじめ、また同時に鉄道、道路、ホテルや劇場などの装置郡、旅行斡旋業や観光協会などの制度郡が整備され始めると庶民にも観光旅行が可能になりました。

20世紀に入り、世界各地で文明システムが整備されると観光人口は大幅に増大しました。いわゆるマス・ツーリズム(大衆観光)の誕生です。特定の観光名所などに観光客が大挙して押し寄せるマスツーリズムは、20世紀半ばに世界的規模での隆盛化がおこると数多くの負のインパクトを生み出しました。すなわち、その地域の自然環境や文化遺産、伝統文化の破壊などです。その様子はまさしく、多数の蟻が一つの獲物に群がり、それを喰らい尽くすのに似ています。

1980年代に入り先進国からの外国旅行者数の増大に伴う途上国の観光開発の激化によりマスツーリズムの弊害がより顕著になると、それにかわる新たな「やさしい観光」などが模索されるようになりました。1987年に環境と開発に関する世界委員会が持続可能な発展 : sustainable developmentという概念を提唱したのをうけて、持続可能な観光 : sustainable tourismの創出が世界的な課題になりました。その具体的なあり方として世界的に注目されるようになったのが「エコ・ツーリズム」です。

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