はじめに
はじめに → エコツアーとは(1/2)

エコツーリズムの定義

それではエコツーリズムとはどのようなものでしょうか。この問に対する答えは一朝一夕には出すことができません。エコツーリズムの歴史はまだ浅く、未だ多様に解釈され明確な定義が定まっていないからです。

「エコツーリズム」という言葉は「エコロジー」と「ツーリズム」の造語であるというのは想像に難くないため、この言葉を見聞きしてまず想像するのは、なんらかの「自然と親しむ」旅行であるというものでしょう。実際一般的にエコツーリズムというとこう解釈されることが多いです。我々が普段耳にする「エコロジー」という語は、このような「自然環境に優しい」という意味合いのみが強調されて使われることが多いですが、実際には「ecology」は「生態学」とも訳されます。「生態学」とは簡単にいうならば「生物の生活に関する科学」であり、自然と共生している人々の活動を含めた、生態的要素すべてを扱っています。

この「エコツーリズム」における「エコロジー」は後者の訳として使われており、故にエコツーリズムが扱うのは「自然とのふれあい」と「地域の人間とのふれあい」です。「自然散策やアウトドア志向型の観光ならこのようにエコツーリズムが叫ばれ始める以前からあったではないか」、と思う人も多いかもしれません。しかしこれまでの観光は資源を限りなくオーバーユースし、いずれは回復も困難になり結局は自然や伝統文化の破壊者となってしまうようなものでありました。これに対しエコツーリズムは、簡単に表現するなら「地域の環境や生活文化を破壊せずに自然や文化に触れ、それらを学ぶことを目的とする旅行」であるといえます。


エコツーリズムの3つの目的

 1998年に設立された日本エコツーリズム推進協議会(現・日本エコツーリズム協会)は、エコツーリズムの目的として3つのことをあげています。まず第一に、地域の自然・歴史・文化資源の保護。これまでのマスツーリズムが観光という一つのシステムの中で全てが利益を得る目的でなされ、結果自然や伝統文化の破壊者となったのに対しエコツーリズムはより保全的要素を強く持っています。エコツーリズムを行うことにより観光客・地域両方の、資源の価値の再認識を促し保全意識を高めるというのです。さきほど「はじめに」の項でマスツーリズムの弊害について述べましたが、これは単に大人数によるツアーを否定しているのではありません。ツアー地のキャリング・キャパシティー(環境収容力)を超えない規模のツアーであれば積極的に推奨すべきです。大勢の人が参加すればそれだけ広く人々の保全意識を高めることができるからです。ゆえにこのエコツーリズムの第一の目的を満たすためには、できるだけ多くの観光客を集める一方でキャリング・キャパシティーを超えてしまわないよう、そのバランス調整が重要だといえます。

第二に、地域固有の資源を生かした観光の成立。マスツーリズムにおける観光開発においては、対象となる地域の外部にある企業や団体が開発主体になる、いわゆる「外発的観光開発」が圧倒的に多かったため、利潤の追求のみを目的として地域社会の意向が軽視されたり資源に関する知識不足から資源の破壊などがしばしばおこりました。これに対しエコツーリズムにおいては、地域固有の自然環境や文化遺産などの資源を維持可能な形でフルに活用した観光開発を行うにあたり、それらの資源に最も関わりの深い人々、資源に関する知識を最ももっておりエコツーリズムによる利益や害を直接うける人々が主体となって行う内発的観光発展が原則となります。

そして第三に、地域経済の活性化があげられています。これはエコツーリズムのもっとも重要な要素といえるかもしれません。これまでのマスツーリズムにおいてはツーリズムにおける収入のほとんどは観光業者が得るものであり、それゆえに利潤のみを追求した、その地域の自然環境や生活を考慮しない観光開発が行われ、結果自然や文化遺産、現地の人々の生活環境は劣化の一途をたどるばかりでした。エコツーリズムにおいては、ツーリズムによる収入が現地の自然環境や文化遺産の保全のために使われ、かつ雇用機会の増大などにより現地の住民の利益になることが鉄則であるとされています。

(c) 2002 Sanda De Eco-tour Projects All Rights Reserved.