2-3.個人の善と社会の善
個人の考える善と社会が責任をもつ善は,同じになる場合もあるが,違うものになる場合もある.どちらにしても,個人の善と社会の善の双方が乖離しない関係にあること,かつ社会的選択の目標という観点からも社会がその構成員に対して提供責任を負うべき善を考慮することが意義のあることである.以上が潜在能力アプローチにおける福祉の概念である. ところで,二つの善が乖離する状況というのは,例えば,中央集権国家に起こり得るような資源は一括で管理・利用されるが,国家の頭脳階級は国会威信が大事と考えるかもしれないし,人口を抑制することが大事だと思えば,強制力をもってそれを断行するかもしれない状況のことである.そのような場合を分析すると,明らかに社会を構成する人々の意思は入らないで,無関係に国家的政策目標を策定されているだろう.これは民主主義国家においても同様に起こり得ることである.そうすると以下2点が問題となる;