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ところで,その潜在能力と財の関係は,一体どのような仕組みで連結されているのであろうか.
上の図表2-5から見て取れるように,財x∈Aをf∈Fという利用方法で活用する.すなわち,ここではある人が「自転車(x)」を「荷物を載せて乗る(f)」ことができるわけであり,この人は機能(b)を実現することができる.つまり,b=f(x)と表せ,この人の実現できる機能を表現することが可能になる.よって,財の集合Aとある人の選択可能な利用方法の集合Fが与えられたとき,ある人の潜在的に達成可能な機能の集合(潜在能力;C)は;
C(A:F)={b|ヨx∈A,ヨf∈F:b=f(x)}
によって与えられることになる7).
ある人の潜在能力に属する機能ならば,その選択することを外部から阻害されることはないので,それについては自由が保障されており,Senはこれを消極的自由と呼んでいる.また,ある人の潜在能力に属する機能であれば,己の支配権の及ぶ財と自らが選択可能な利用方法を自律的・責任的に選択し実現することができる.これは自らが積極的に選択を行う部分であり能力であるので,積極的自由と捉える.要するに,この潜在能力がある人の福祉的自由の指標として適切であると考えられ,Senの福祉の経済学の基本的概念となっている.
7) 詳しくは,[(Sen,1985).引用は(鈴村訳,1988)pp.23-26] |