リサーチフェア2002

0.問題意識


0-2. 政策と平等−相対的貧困−

 前節のことから,政策を構築・実施・評価する根拠として福祉の指標は必要不可欠となる.また,さらにその福祉の指標を考慮する前提として「何の平等か」を取り扱うことが必要である.ただ,今回の発表ではこの点に関しての詳細は割愛する.

 少し歴史を溯ると,かつてはGNPGDPが福祉の経済的指標として活用されてきた.しかしながら,今日でも同様のことがいえるだろうか.つまり,日本経済の規模を表すGDPが成長すれば,社会が幸せを増幅させていることを表していると捉えることができるだろうか.おそらく,幸福は社会の一部に恩恵を享受させることになり,残りの大多数は恩恵を受けることはないだろう.

 戦後の高度経済成長を経ている間は,絶対的貧困を解消してきたのでほとんどの日本人は幸せを実感してきた.その間にも問題は広がっていた.その問題は相対的不平等の拡大であり,要するに,経済のパイが大きくなると同時に,経済所得のシェアの格差も広がったのである.その問題を真剣に受け止めてこなかった背景には,先にも挙げた絶対的貧困の解消による福祉の拡大が,相対的格差の広がりを無視させるだけの力があったことが考えられる.しかし,今日の日本においては,そのような絶対的貧困の時代は既に終わりを告げており,新たな福祉の問題へ移行している


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