多国籍企業‐まとめ‐


このように現在存在する多国籍企業の定義は、各人の解釈に即した定義がなされていて、言葉は違っても内容は同じ場合があることに気づかされる。冒頭で述べた様にいまだ多国籍企業には明確な定義がないということにも納得されたであろう(どの定義も間違っている訳ではないので1つの定義にまとめられないと言ったほうが正しいかもしれない)。また一方では時系列で見ても、多国籍企業は一貫して、組織を国ごとに分離したものとみなすのではなく、ネットワーク状であるとみなしていた。まとめとし、まずグローバルビジネスを上記の定義を踏まえて分類すると“国際企業多国籍企業トランスナショナル企業”の3つに分けるのが妥当ではないかと思われる。国際企業というのは国内事業を中心し、国際業務は国際事業部の管轄であり、内外の関連が薄い企業と考えられる。多国籍企業は1つの中心(本社)を軸に複数国で法人を持ちそれぞれの地域(現地)専念型の経営を行う企業。商品やサービスは極めて現地のトレンドに左右され易いく、人材も現地採用が多い。トランスナショナル企業は複数の中心があり、有機的な働きをする。出身国のアイデンティティーというものはあまり重視されず、世界に通用する商品やサービスを扱う特徴がある。もちろん企業形態より適切な運営方法があるのでこの3つのどれが一番有効かということは問題視できないが、現代グローバル社会に強く必要とされるのは3つ目のトランスナショナルという概念であると思う。なぜならグローバリゼーションが進むにつれ私たち人類にとって国籍や国境はますます意味をなさないものとなっているからである。つまり個人の要素が何かということよりも、個人がどう関係しているかというネットワークに関心を持つようになってきているからである。グローバリゼーションの研究者であるロバートソンは個別主義的側面(ローカル)と普遍的側面(グローバル)の両立が重要だと述べている。これは岩尾と茂垣のグローカルと言う考えと類似しているといえよう。現代社会では個に焦点を当てるのではなく、相互に作用する有機体としてみる発想が大切なのである。


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