Cこれからの千里ニュータウンは・・・?
建物の老朽化や入居者の高齢化などで「オールドタウン」と揶揄されるようになってしまったニュータウン。ニュータウンが再び活性化するには、どうしていけばよいでしょうか?
ここでは千里ニュータウンにおける実際の取り組み事例をいくつか紹介したいと思います。
- より良い住居へ〜老朽化マンションの建て替え
- 新千里西町K−A団地の例
大阪府住宅供給公社が1970(昭和45)年度に完成させました。
エレベーターなしの5階建て。全戸3LDK、専有床面積は60.0u、150戸。
千里中央駅の西、駅まで徒歩六分程度。
入居から17年経った頃から建物の傷みが目立ち始め、補修を目的としたマンションリフォーム小委員会を設置(1987年)
しかしゼネコンからは建て替え計画が提案されます。
- 等価交換方式(建物を建て替える際に現状より増床させ、増床した分を分譲することで地権者の建て替えに係る出費を減らす方式)による建て替え。
- 14階建て三棟210戸を建設。一棟に3基のエレベーターを付ける。
- 等価交換の床面積は80u
- 引越し費用として一戸当たり400万円を提供
当然のことながら住民は補修ではなく建て替えに方針変更することに。
しかしながら1989(平成元)年2月に豊中市は住環境の維持・保全を理由に当地区の法定容積率をそれまでの200%→150%に引き下げたことと、その引き上げ交渉中にバブルがはじけてしまったために本計画は立ち消えとなってしまいました。
その後1994年(平成6年)に再度大規模修繕の検討がなされましたが、修繕費用3億円に対しプールされていた修繕積立金は1億5千万円。不足分を所有者全員で割ると一人当たり100万円の一時金出費となり、年金暮らしの高齢者などにとっては負担しづらいものでした。
そこで再び建て替え計画が浮かび上がることになります。
区分所有者に対してアンケート調査を実施したところ、条件付賛成を含め94%の区分所有者が賛成の意思表示をし、反対派わずか9人(6%)にしか過ぎなかったのです。この結果を踏まえ建て替え委員会が発足(1994年8月)、容積率も1991年に再び200%に緩和されていたこともあり、本格的に建て替えに向けて動き出したのです。
建て替え方式は区分所有法62条に定められた条件で決められる方式(「法定建て替え方式」といいます)ではなく民法の共有者全員合意の原則に則った方式(「任意建て替え方式」といいます)がありますが、法定建て替え方式の前例がないことから、区分所有者全員の合意を取る任意建て替え方式での建て替えを目指すことになりました。
また、同時に建て替え後の基準階(5階)の専有床面積がそれまでと同面積の場合は所有者に追加負担を必要としない等価交換方式を採用しました。
豊中市からの助成金制度を利用して専門のコンサルタントに協力を依頼し、1996(平成8年)年6月に二段階コンペ方式による業者選定を行い、リクルートコスモス社他二社のJV(ジョイントベンチャー)による事業グループをパートナーとして決定。そして四つの分野で事業パートナーと建て替え実行委員会双方からの委員で構成する協議会を組織し、この協議会において建て替え計画を進めていきました。
- 14階建て263戸、それまでの戸数との差113戸は分譲することで建て替え費用に充当する(等価交換方式)
- バリアフリー仕様、2LDK〜4LDKの幅広い住居タイプ
- 容積率193.3%、緑地率も30%を確保
- エントランスはオートロック、宅配ロッカー、24時間換気システム、駐車場は全世帯数分確保。バーベキュー施設やテニスやバレーボールができるコートも設置
と正に建て替え後のマンションはさながら「高級マンション」の様相でありました。
この建て替えにおいては、建て替え委員会はメンバーに場所的な偏りがないように、各棟の各階段からメンバーを選出し、同時に10戸単位の階段別懇談会を組成して少人数で意見が自由に出せるような配慮がされるなど、住民の意見が尊重されました。
また任意建て替えということもあり区分所有者全員の合意を取り付けないといけなくなるため、建て替え委員会では反対者の細かい説得にも力を注ぎ、結果、最高の形での再生を果たすことになります。
「フォルム千里中央」と改称された新千里西町K-A団地は1999年9月に完成、引渡しがされ再入居が始まり現在に至ります。
自治会活動においても、入居が始まった年の12月にはマンション独自の自治会を結成し、西町連合協議会に再加入して、ニュータウンにおけるコミュニティ活動に積極的に参加しています。
- コミュニティ活動の活性化に向けて〜行政の取り組み事例
- 「千里ニュータウンの再生を考える市民100人委員会」(吹田市の場合)
吹田市では、実際に居住する住民に今後の千里ニュータウンを話し合ってもらおうと2001年3月31日、公募により集まった73人の住民により発足しました。
『環境』『少子高齢化』『文化・コミュニティ活動』『コミュニティ支援施設』『住宅・交通』の5つの分野に分けて分科会を設け、一年近くに渡って分科会毎の話し合いがもたれました。1年経った今年3月に中間報告書がまとめられ、現在最終報告書の提出に向けて最後の詰めの段階に入っているそうです。
私も昨年の6月にメイシアター(文化会館)で開かれた分科会を傍聴しましたが、活発な議論が交わされており、参加者の方々の「わがまち千里」への熱い思いを感じ取れました。
- 『千里ニュータウン 住宅地再生に向けた提言』(豊中市・豊中市政研究所共同研究)
豊中市の場合、シンクタンク機能を持つ豊中市政研究所があり、行政に関する様々な研究を行っています。
平成13年度においては市および市政研究所職員や学識経験者などで構成される「千里ニュータウン再生プラン研究会」において研究を重ね、提言が出されました。本提言の中では、千里ニュータウンにおける課題を整理した上で以下の5つの重点施策を提案しています。
- 住民主導による地域単位のプラン作りに向けたモデル事業の実施
- 若年居住の推進と高齢者の安定的居住の確保(公共賃貸住宅などに対する要請と協議の推進)
- 身近な生活支援機能の導入に向けた適切な用途複合化の推進
- コミュニティビジネスをはじめとする住民活動の支援
- ニュータウン全域(吹田市域を含む)における統一的な施策を推進するしくみづくり
この重点施策をもとに
千里ニュータウン固有の「地域資産」を保全・継承しつつ、多様な住宅供給の推進を通じて居住者の人口バランスを改善すると共に、身近な生活支援機能を充実させることにより、幅広い世代が生き生きと暮らす活力ある「まち」を形成する。
という基本目標を定めた上で、住宅戸数の適切な増大、バリアフリーの推進、高齢者生活支援施設や住宅の計画的整備、公共賃貸住宅の再生推進・・・といった具体的施策メニューを実行していくべく議論を深めている・・・というところでしょうか。
【参考文献】 福原正弘著「甦れニュータウン 交流による再生を求めて」古今書院、2001年
千里ニュータウンの再生を考える市民100人委員会編
「千里ニュータウンの再生を考える市民100人委員会中間報告書
市民が考え・発信する千里ニュータウンの再生ビジョン−生活者の観点から−」2002年
平成13年度(2001年度)豊中市・豊中市政研究所共同研究「千里ニュータウン 住宅地再生に向けた提言」
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