他とはちがう山中先生、ラジオ局開設秘話

- 山中ゼミはどんなところですか

金井：
　現在は2つのグループに別れています。一つがハワイに行って日系2世、3世の人たちにインタビューして、その人たちのライフヒストリーを取材し、ドキュメンタリーをつくるというもの。もう一つがWeb上でのFMラジオ放送局を運営しています。

工藤：
　ハワイのほうは山中先生の専門だから。ラジオに関しては先生が「単位とか関係なしにやりたいやつがきてやったら面白い」という呼びかけで集まったもので、 最初はゼミでっていうことではなかったけどね。

金井啓ゼミ長。
工藤と二人で運営するFMラジオについて「この神戸三田キャンパスののほほんとした雰囲気をそのままラジオに持ち込んで番組を作っている。そういうのが聞く人に伝われば」と語る。

- FMについておきかせください

金井：
　先生は（FMを）やりたいっていっただけで、立ち上げも運営も自分たちだけでやってきました。今のところは学内からのWeb上だけでしか聞けないけど、もうすぐ学外からも聞けるようにします。今メディア情報学科についての番組も作っていますが、そういった外向けのコンテンツをつくれば、学校のプロモーションにもつながると思う。受験生なんかに聞いてもらったりして。スポンサーをつけるつもりは今のところはないけど、僕たちの活動に興味をしめしてくれているレコード会社もあったりします。

工藤：
　そういう意味ではこのFMも学外から商業的価値が認められつつあるのかも。小さくてもメディアやからね。

- 山中教授はどんな人ですか

工藤：
　変な人（笑）。入学のとき、先生は挨拶で「（その前の教授の挨拶で）いま先生はみんなが「空のように青い心」を持っているいわはったけど、お前らそんなん持ってないやろ！」って言い出して、学生の席のほうへずんずん入っていって、寝てる人の頭をひっぱたいて「お前持ってないやろ！」みたいな調子だった（笑）。その頃から（いい意味で）変な人やな、って思ってたし、絶対に雰囲気が何か違う。何か活動をしてるわけでもなかった私も、先生の話を聞いていると何かやろうと思えた。私たちがFMで失敗したり低迷したりすると、「ほらみろ〜」と言ってくる。でもそういう変な励まし方をするからこっちはあえて興奮してやったるねんと思う。そのあたりが私が感じた先生の新鮮さで、私たちも気楽にできる理由だと思います。

金井：
　ゼミの時間も決まったものはなくて、セメスターの前から「お前らはゼミにこんでもいい。そのかわり放送は毎日続けないと落第や」と言われた。ほったらかしだから自分らで動くしかない。けどそれがまた楽しいしやりやすいですね。

もう一つの柱　ハワイ研究について

- ハワイ研究についておきかせください

高橋：
　今年は夏休み、9月に2週間くらい、ハワイの日系人2世にインタビューに行きました。内容としては戦争のことやプランテーションでの労働のことだとか。そういったことを取材して一人の人間のライフストーリーを映像番組として制作する。
もともと先生はハワイに留学して、在住もしていまして、その関係で昔から学生をハワイに連れて行って、ずっと同じ活動を続けています。私たちはフィールドワークを通して、どういった内容のもを作るか、中身とか人とのコミュニケーションとか、一生糧になるようなことが活動では重視されているような気がします。

金井：
　そういう意味で、先生は人として教えてくれている、という感じがするかな。

教授の語る学生の活動

（偶然にも山中教授がいらしたのでお話をうかがうことができました）

- ハワイのフィールドワークはどのような狙いでやっていますか

山中教授：
　（映像番組のような）コンテンツプロダクションをするとき、何でも作ればいいってものじゃなく、中身がきっちりしているものを作らないといけない。取材の方法から何からすべて大きな枠組みを持って取り組まないといいものは生まれない。ヒューマンドキュメンタリー制作はそういった基礎を養えるんです。そのいろはを知ればメディア取材の基礎だと私は思っています。

　その過程で得るものは非常に財産になると思うよ。これまで10年以上にわたってハワイへ赴いているので、現地の人たちは何も言わなくても大いに歓迎してくれています。代々積み重ねた信頼関係があるからです。それに一生懸命応えていく。そうすれば向こうに、自分たちのコミュニティのために尽くしてくれているんだなぁと感じてもらえる。こちらも学べるし、向こう側もある種の癒しがあるっていう、そういう関係をこれからも築いていきたい。

- ラジオの発起人も山中先生ということですが

　そういうのがあればいいなぁって思って（一同笑）。でもまぁここまで続くとは思わなかった（注：2004年度春発足より半年）。すぐ1,2週間くらいでつぶれちゃうと思ってたけど、ほんとにこいつらよくやってるわぁ。途中でいろいろ問題があってもうまくスネークアウトできるっていうのが今の若い世代で、そこが昔とは違って柔軟性があるね。そういう問題を通していろいろ学べるしね。ただ外部資金がないから。ウェブテレビの立ち上げも現在薦めていますが、そこでは広告を載せれるかもしれない。コンテンツとしてはゼミで制作しているものを流すつもりです。そういうことを含めて局の運営をゼミ主体でやっていこうと思っています。

- メディア情報学科については

　コンピュータや映像の技術的なことではなく、中身のあるコンテンツを提供できるということを私たちは目指しています。メディア情報学科全体に関しても、オタク集団にしたくないんです。自分から何か伝えたい、何かやりたいことがある、と言える学生が集まってほしいと思っています。その成果を媒体に載せてコンテンツができる。そのためにはやはりプロダクションをしっかりしていかないといけない…違う？（一同笑）。

（インタビュアー：西村）