点訳マニュアル(2006年度秋学期用;一部省略・改編)

T.キャンパス自立支援課の部屋の構成・決まりごと(略)


U.点訳サポートの流れ・決まりごと

U―1.配布資料の入手(キャンパス自立支援課)

1.授業担当者から配布資料をデジタル・データ、もしくは紙媒体でキャンパス自立支援課が入手します。

2.デジタル・データの場合は、点訳サポート用のPCに移動します。Volunteerという共有フォルダには2006年度利用学生の履修している各授業名のフォルダがあり、それぞれデータを入れておきます。

3.配布資料原稿(紙媒体)は、キャンパス自立支援課の「新しいレジュメ・校正中」の箱に入れておきます。



U―2.点訳の流れ(サポートスタッフ用)

1.キャンパス自立支援課に入ったら、デスクトップのPCをたちあげ、IDとパスワードでログインします。

2.PCの前の壁に貼ってある「Tさん(2006年度利用学生の仮名)時間割・作業工程表」を見て、次の授業分の点訳ができているか、必ず確認をして下さい。

3.作業工程表内の左に「○」があれば資料があることを示します。点訳の校正は2回、別の人が行なうようにして下さい(授業に間に合いそうにない時は1回の校正でよい)。校正・印刷をしたら、そのチェック欄に自分の名前を記入して下さい。印刷までできていない場合は、「新しいレジュメ・校正中」の箱の中に原稿があるはずなので、続きの校正をして下さい(具体的な校正方法はW.EXTRAでの点訳作業の流れを参照)。

4.印刷を終えたら、1枚ずつ切り離し、ホッチキスで左綴じにするか、紐で綴じて下さい。

5.授業名や資料名を点訳の一番上に必ず記入して下さい。

6.119号室(ユニバーサルデザイン教育研究センター)の棚にある授業ごとの箱に入れて下さい。

7.点訳・校正・印刷の終了したデータ及び原稿データは、共有ドライブの「0特別対応授業準備」フォルダ内の「■さん■秋」内の各授業名フォルダへ移動して下さい。

8.校正は済んだが、印刷が済んでいないファイルは共有ドライブの「校正済み」フォルダへ入れておいて下さい。印刷が済んだら7の作業(各授業名フォルダへ移動)をして下さい。

9.点訳を終えた紙原稿は、「印刷済み」の箱に入れて下さい。



U−3.引継ぎのノート

 授業ごとに作業の引継ぎ書があります。授業ごとに、1つのファイルに仕切られています。校正途中のものがあれば、引継ぎ内容を書いて作業を終えて下さい(このノートをもとに作業の引継ぎをするので、必ず記入して下さい)。



V.点訳校正の注意(Tさんサポート用のローカル・ルールも含む)
V−1.点字の基本構成

1.点字は、6点で1カラム(1文字)を構成します。

2.文字の全角・半角の区別はありません。

3.点字は、もともとアルファベットから発明され、英語の点字は、1アルファベット1カラムで表す「Grade1」と、頻繁に使用する単語を略字化した「Grade2」があり、一般的に大学で学ぶレベルの人は後者を修得しています。Tさんも後者を使用しています。

4.数字、英語、英語の大文字を表すには、文節の初めにそれらを表す記号が入ります。したがって、基本的に6つの点で日本語、数字、英語、大文字、小文字を表すことになります。

5.日本語点字には、漢字がありません。従って、すべてひらがな(カタカナ)で表記します。しかも、音で表記するため、長音を表す「う」は「−」、私は「は」は「わ」、そこへの「へ」は「え」などと特殊な表記をします。

6.また、読みやすいように文節ごとにスペースを入れますが、これを「分かち書き」と呼びます。

◆点字と分かち書きの文の例




V−2.印刷・見出しレイアウト

1.基本的に、文章は両面印刷、図表は片面で印刷します。ページレイアウトについては、両面時は18行に、片面時は22行に設定します。

2.授業名、日付の入れ方ですが、
一行目:8カラム空けて授業名を入れます。
二行目:8カラム空けて日付 同じ行に2カラム空けて授業回数を入れます。
三行目:原本のページ(数字だけでPは不要です。複数になる場合「1〜2」というように記入します)。
四行目:ここからルールにそって見出しや本文に入ります。
注意) EXTRAでは、点字のページ数は自動的にヘッダーに入るように設定されています。

3.タイトルのレイアウトですが、
 大見出し(タイトル):8カラム空けます。
 中見出し(章):6カラム空けます。
 小見出し:4カラム空けます。

4.(点字画面で)見出し(タイトル)が二行に渡る時は、最初の行より1カラム下げて続けて下さい。
 大見出し:8カラム空けてタイトルを入れ、2行目にかかる時は9カラム空けて続けて下さい。
 中見出し:6カラム空けてタイトルを入れ、2行目にかかる時は7カラム空けて続けて下さい。
注意) 大見出し、中見出しと続く場合それぞれの間に1行のスペースは必要ありません。

◆実例:上図は中見出し(「第6章 障害に悩む」)と小見出し(「ピアノってどんな色なの?」)の例を示す。下図はその分かち書き文





(当山啓『点字・点訳基本入門』から)


V−3.ページの付け方

1.原本のページ表示については、2枚目からデータのページ数は、通常必ず2カラム空けて一番左上に入れて下さい(途中には入れない)。数字だけでPは不要です。複数になる場合は、「1〜2」と記入して下さい。

2.原本がパワーポイントの場合は、ページを左上に入れるのはもちろんの事ですが、途中ページが代わる毎に1行空け、その次の行の文頭から2カラム空け数字のみ記入して下さい。次の本文との間は1行空けなくてもかまいません(なお、ページとページの間は1行空けて下さい。)



V−4.箇条書き・下線・記号等

1.文頭に来る箇条書きの括弧( )については以下のようにして下さい。なお、□は1カラムをあらわします。
  英語の場合は括弧の前後に1カラム空けて下さい。
  例: (1)Abcde   →   □(1)□Abcde
  日本語の場合は括弧の前後に2カラム空けて下さい。
  例: (1)あいうえお   →   □□(1)□□あいうえお

2.文中の( )に関しては、日本語も英語も括弧前のスペースは不要ですが、閉じ括弧の後には1カラムが必要です(分かち書きの関係で自然に入る)。しかし、閉じ括弧の後に「を」、「に」、「で」のような助詞がきた場合はスペースは入れずに続けて下さい。
  例: あいうえお ( ) を、かきくけこ → あいうえお( )を、□かきくけこ

3.文頭にくる中点・は不要です。主に使われている例としては、箇条書きの際に文頭に用いられる事が多いのですが、2カラム空けて頭をそろえておけば、箇条書きだとわかるので不要です。

  例: ・あいうえお   →   □□あいうえお

4.文頭など箇条書きのコロン(:)やセミコロン(;)は不要です。

  例: TASK1: Abcdeのような場合は、「:」は必要なし。

5.下線は決まり記号に置き換えて下さい  →□(記号「」)□

  例1) あいうえお   →   あい□(@「うえ 」)□お とする。
        @

  例2)The managers inform, issued weekly, is helpful.
      A                  B      C
   → □□(A「The managers」□inform,□issued□(B「weekly」),□is□(C「helpful」).とする。



V−5.図表等の場合

1.まず、表のタイトルの番号にハイフンがある場合、点字ではアンダーバーを用いて下さい。それから、各セルに仮記号を付けて、そのセル毎に書かれた内容を別途文章で説明して下さい。

2.図・グラフ・写真などの場合ですが、
@図・グラフ・写真などは内容によっては、文章で説明することになります。
A簡単な図及びグラフは、レーズライターを用いると誰でも速記できるし、分かり易いのですが、文字(点字)を入れることができません(レーズライターとは、薄紙にボールペンでひっかくとひっかいたところが立体的に浮き上がることで図形を示すもの)。
B一方、点図エディタ(Braille Figure)で作図する場合は、文字も挿入できてわかりやすいようです。
注意) 点図エディタで作成したものに関して、張り合せ可能ページは合計4枚までとする。

3.線の使い分けですが、以下のように打つと線の表記になります。

 実線  うううううううううう
 点線  ああああああああああ
 中太線 れれれれれれれれれれ
 太線  めめめめめめめめめめ


V−6.校正上の注意

1.提出されたデータやスキャンしたデータは、原文のレイアウト上、文章に改行が入っていますが、校正時は削除し、意味の区切りの良いところで、改行しなおして下さい。

2.単語の途中で改行しないで下さい。

3.日本語は、特に漢字の読み方に間違いがあるので、注意して下さい。特に人名に関しては読み方のチェックを必ずおこなって下さい。わからないものは必ず自分で調べるか、キャンパス自立支援課スタッフへ確認することをお願いします。その場でわからない専門用語等は各担当教員へ問い合わせをおこないます。

4.英語で、ハイフンで改行して続けてある単語は、ハイフンを削除してつなげて下さい。

5.ローマ数字は、英語と同じ表記でわかりにくいので、文章の内容に差し支えなければアラビア数字に変えて下さい。

6.2重括弧など特殊な記号は、意味上で支障なければ、削除したり、括弧や違う文字に変えて下さい(2重括弧等は4カラム、特殊記号は6カラム等と不要にスペースをとるため)
7.英語の点字も墨字と同じく「,」(カンマ)の後は1スペース開けますが、「'」(アポストロフィー)の後や「,」(カンマ)、「.」(ピリオド)の前にスペースを開けないで下さい(EXTRAでは文章をインポートした時にスペースが挿入される場合があるので、必ず削除するように注意して下さい)。
注意)下線、太字、イタリックなどを示す点字は存在しますが、6点入力ができないと打てません。また、挿入するには点字が読めないとできないので、間違いを避けるため使用していません。


W.分かち書きに関するルール


1.自立語の前は区切り、付属語は前に続けて下さい。仮名点字では、意味を把握しやすいように、適当な所でスペースを入れて文章を区切って下さい。基本的には、「ね」とか「さ」を入れて、自然な文章になるようにしてください。また、「ね」等の箇所をスペースにして下さい。

例)「学期末の試験はあと1週間に迫った」は下記のように読んで、(ね)のところをスペースにする。
 →「がっきまつの(ね)しけんわ(ね)あと(ね)1しゅーかんごに(ね)せまった(んだよ)」

参考)「と」を接続詞として使う時は、自立語なので区切る・

例) 「あたりわ しずまりかえった。と、とつぜん・・・」

2.自立語内部に自立可能な成分があれば区切って下さい(「自立語内部の切れ続き」という)。基本的に、2拍以下の語は続け、3拍以上の語は区切ります。但し、漢字2文字の語は2拍でも区切るものが多いようです。

(例) 「総理大臣」→「そーり だいじん」
    「都市国家」→「とし こっか」

(注) 「総理府」「副総理」などは区切らない
(例外)「総理府令」→「そーりふ れい」


X.デジタル・データの受け渡しにおける注意事項


 資料の量があまりにも膨大な時は、点字で印刷したものは持ち運びにくいので、デジタル・データで渡します。BESという点字ファイル形式にすると、ブレイルメモで読めるので大変便利です。



X―1.BES形式にするには

1.原稿のデータがないときはOCRで読み取り、校正します。

2.EXTRAを立ち上げ、原稿データをインポートします。

3.日本語の場合は、漢字の間違いがないか確認します。

4.レイアウトを整えます。

5.ファイルからプルダウンし、エクスポートを押します。

6.保存ファイルの形式を聞いてくるので、BESを選択し、Volunteerの共有フォルダ内の該当する授業科目のフォルダへ保存します。
注意)資料の量が膨大だったり、時間がなく、やむを得ないときは3と4の工程を省略して下さい。
注意2)テキストデータで渡して、音声読み上げソフトで読み上げることも可能です。しかし、日本語の場合は読み間違えなどが多くなり、正確には伝わらないというデメリットがあります。



X―2.ブレイルメモのデータを墨字にする方法

 授業内試験の解答・アンケートなどを提出する時にこの作業が発生する場合があります。

1.点字プリンタにつながっているPCをadministratorのパスワードで立ち上げる。

2.利用学生のブレイルメモを立ち上げ、通信スピードを9600に設定してもらう。

3.利用学生のブレイルメモとPCを9ピンクロスケーブルでつなぐ。

4.PCのスタートメニューからBMTERMのアイコンをクリックする(接続できていればデータ受信、送信等の選択画面が表示される。通信不良ならエラーメッセージがでる)。

5.受信をクリックすると、ブレイルメモの中の情報がすべて見ることができます(番号順、あいうえお順に並んでいる)。

6.受信するファイルデータをクリックして下さい。

7.保存の場所、保存ファイル形式を聞いてくるので、とりあえずVolunteerの共有フォルダ内にBES形式で名前をつけて保存して下さい。

8.BMTERMの画面はここで終了して、閉じます(ケーブルもはずしてかまいません)。

9.BESを立ち上げ、保存したファイルを開きます。この際、開く形式を環境かファイルか聞かれるので環境を選んで下さい。

10.ファイルが開かれ点字のみが現れます。ここでF4キーを押すとカタカナ墨字が併記されます。英語の場合は、Shift+F4を押すと英語に変換されます。

11.利用学生にファイル内容に間違いがないか、文章がすべて受信されているか確認して下さい(最初と最後の数行の文章を読み合わせる)。

12.閉じる時は必ず上書き保存して下さい。この時点で利用学生は教室を退出してかまいません。

13.英語の場合は名前をつけて、保存からテキスト形式で保存します。Wordを開き、保存したテキストファイルを開け、体裁を整えます。

14.Wordのプリンタの設定をクリックし、プリンタ名をCanon LASER SHOT LBP-3210にします。

15.日本語の場合は一度BESファイルを閉じ、ブレイルスキャンを立ち上げ、BESファイを開きます。

16.テキスト編集をクリックして漢字に変換、「スペースをとる」をクリックします。

17.漢字の間違いがないか文章の前後から判断し、明らかにわかる場合は訂正して下さい。不明確な場合はひらがなのままおいておきます。

18.ファイルからプルダウンし、墨字テキストで保存をクリックし、名前をつけて、Volunteerの共有フォルダ内に保存します。

19.Wordを立ち上げ、保存したテキストファイルを開き体裁を整え、プリントアウトします(印刷設定画面のプリンタ名を14と同じに設定する)。


Y.EXTRAでの点訳作業の流れ
Y−1.紙媒体のデータの点訳

1.OCRソフトのe.Typistを立ち上げ、スキャナで文書原稿を取り込み、テキストデータに変換し、テキスト形式で名前を付けて保存します。

2.点訳ソフトのEXTRA for Windows ver.4をたち上げます。図4に示す3分割された画面が表示されます。

3.画面上のメニューバーファイルの中のインポートをクリックし(もしくはインポートアイコンをクリック)、先ほど名前を付けて保存したファイルを指定します。データが読み込まれ、読み込みと同時に点訳処理がされます。目的とするファイル名が見当たらない場合は、「ファイルの種類」が保存したファイルの形式になっていないことがあるので、切り替えます。

4.画面上に、読み込んだデータ(書式なし)、点字用の文書データ(分かち書き)、点字が上から順に表示されます。1番上のインポートしたデータを元原稿と比較し、不要な部分を削除したり補足しながら、文字化けや単語の途中で改行されていないかを確認し、間違いがあればそこで訂正します。
注意)点訳の場合は情報のみが必要です。文字飾りやレイアウトされていると、かえってわかりにくい場合がありますので、それらを考慮しながら校正、変更して下さい。

5.日本語の場合は、真ん中の画面の点字用データで、漢字の読みが間違っていないか、単語の途中で改行されていないか、分かち書きがあっているかを確認し、間違いがあればそこで訂正します。

6.次に、画面上のメニューバー設定の中のページレイアウトをクリックし、原稿の内容によって片面印刷か両面印刷かを判断し、点字レイヤの行数を片面の場合は22行、両面の場合は18行に設定して下さい。なお、1行あたり32カラムと決まっています。

7.1番下の点字データ画面で、単語の途中で改行されていないかを確認し、間違いがあればそこで訂正して下さい。表などはここでレイアウトを調整します。

8.全て校正が終わったら、名前を付けて保存して下さい(これらのデータは3つとも同時に1つのファイルとして保存されます。拡張子は.exf)。

9.点字専用の用紙をプリンタに設定します。設定後プリンタの電源を入れて下さい。なお、用紙設定の時は必ず電源を切って下さい。

10.画面上のメニューバーファイルの中の点字印刷設定をクリックし、片面印刷か両面印刷かを選択して下さい。このとき、プリンタの機種が「Dog-Multi」,プリンタ名が「Generic/Text Only」と設定されているか確認して下さい(稀に変わっていることがあります)。用紙のサイズやページレイアウトは設定済みなので、ここでは変える必要ありません(片面22行32カラム、両面18行32カラム)。


11.ファイルの中の点字印刷をクリックし、必要なページを印刷して下さい。

12.両面印刷の場合は、まず奇数ページだけが印刷され、その後裏面に偶数ページが印刷されます。用紙は手で裏返さなければなりません。その時も必ずプリンタの電源を切って下さい。



Y―2.電子データの点訳

 EXTRA for Windows ver.4は、下記のファイル形式をサポートしているので、点訳は、データをインポートして、W−1.紙媒体のデータの点訳の2からと同じ作業でできます(ファイル形式は省略)。



Y−3.OCR作業の流れ(省略)


Z.点訳スタッフとしての守秘義務等
Z−1.守秘義務

 点訳スタッフは、翻訳者と同様、業務の過程において知り得た情報を第三者に漏らしてはいけないという守秘義務が課せられています(個人情報保護法)。とくに、学生のプライバシーの問題にかかわることで、業務中に知ったことについて漏らしてはいけません。



Z−2.著作権

 著作権法の関係で、点訳の元原稿、原稿データ、点訳データをサポート室の外に持ち出したり、スタッフが個人的に保有することは、コピーも含めてできません。



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