肢体不自由、病弱
肢体に不自由のある学生、あるいは内部疾患等で病弱な学生に対しては、充分な相談の上で、個々の状況に応じて支援方法をコーディネートする必要があります。とくに、大学教育においては、たんに講義等についての授業保障をするにとどまらず、自らの意思を積極的に表出するコミュニケーション活動を促進するように心がけなければなりません。
◆全体的な対応
日本学生支援機構が推奨する配慮として、まず、講義の際の(1)座席の配慮、(2)講義の際のPC持込許可、(3)必要な場合、ノートテイクのコーディネート(聴覚障がい学生支援としてのノートテイクとは目的、方法も異なります。聴覚障害への対応としてのノートテイクについてはこちらのページに説明がありますので、ご参考にして下さい)、(4)あるいは代筆があります。さらに、(5)学内生活での介助も必要です。
(1)講義室等の配慮
肢体不自由(特に車いす利用)の学生には、移動しやすい1階の講義室やエレベーターの位置等もじゅうようです。このため、教室変更が必要な場合もでてきます。
教室内での座席配置、スペースの確保、ノートテイクや代筆を利用する場合はそのスペースも配慮しなければいけません。また、移動の際の動線や安全の確保、移動中の段差の解消にも気をくばらなければいけません。
とくにドアの構造等も重要です。右の図はユニバーサルデザインによるドアノブの改良です。健常の方には気がつかれないかと思いますが、通常のドアノブは上肢に障がいがある方にとって使いにくい場合があります。教室に入ろうとしても、ドアノブが回らなくて入れない、あるいは固くて車いすの方が動いてしまう。そんな場合、右の図のように引き戸にしたり、ドアノブをレバータイプにする工夫が必要です。このように、高齢者、身体障がい者等に配慮された建築の促進に関する法律が「ハートビル法」です。
(2)講義での配慮
講義において必要に応じてノートテイク等を準備するほか、もう一つ配慮を払わなければならないことに試験があります。例えば、(1)試験時間延長・別室受験、(2)解答方法についての配慮(PCの使用による回答等)、あるいは(3)代筆が必要な場合も出てきます。
(3)建物の施設・設備上の配慮
まず、スロープやエレベーター、身体障がい者用トイレ等々の設置が必要です。また、その際に、車いす利用に十分なスペースが必要です。スロープも、方向転換する際のスペースに注意しなければいけません。もちろん、できるだけ水平である必要があります。
また、障害がある学生が自家用車を利用する場合は、駐車スペースの確保も必要です。 視覚障害の学生の方に対しても同様ですが、キャンパス内移動のため、動線に気を配り、必要によっては専用のキャンパスマップを作成したり、危険箇所等が分かるように「ハザードマップ」を提供する可能性もあります。食事、トイレなどの介助に対応する場合は、同性の支援者が必要となります。
屋外の段差の解消(特に建物入口や、道路の舗装等)も注意を払わなければなりません。
さらに専用の休憩室(スペース)が必要とな場合もあります(病弱な学生も同様)。また、教材や学用品を持って歩くことが困難な場合がありますので、ロッカーの確保などの配慮も必要となります。
◆IT技術の応用
とくに、肢体が不自由な学生の教育では、PCならびにインターネット活用が欠かせません。例えば、上肢に障害があって筆記が困難な学生には、入力装置を工夫することでPCを自力で操作することもあります。
例えば、マイクロソフト社等では、肢体が不自由な方のための支援技術製品として、以下が挙げられています
◆マイクロソフト社のHP
http://www.microsoft.com/japan/enable/guides/dexterity.mspx
音声入力ソフト | 音声認識プログラムとも呼ばれ、マウスやキーボードの代わりに音声でPCを操作できます。 |
ソフトウェア キーボード | PC画面上に標準/特殊なキーボードのイメージを表示します。マウス、タッチ スクリーン、トラックボール、ジョイスティック、スイッチ、電子ポインティング デバイス等を使用してキーを選択します。 |
キーボード フィルタ | 単語認識ユーティリティや単語チェック アドオンなどの入力支援によって、キーボード入力回数を減少させます。キーボード フィルタを使用すると、必要な文字に素早くアクセスしたり、間違ったキーを入力することを防いだりすることができます。 |
タッチスクリーン | PCモニターに取り付け/組み込んで、スクリーンに触れることにで選択や入力を行います。 |
代替入力デバイス | 代替キーボード、電子ポインティング デバイス、呼吸による入力装置、wands and sticks、ジョイスティック、トラックボールなどが含まれます。通常のキーボードやポインティング デバイス以外の手段でコンピュータを操作できるようにするツールです。 |
このような情報機器・ソフトを利用して、さらに充実した学習支援方法を探っていく必要があります。