インタビュアー:芳本久士(ホーリーアンドウォーリー)


芳本:今日はよろしくお願いします。私はハワイでフィールドワークという事しか山中工房の事を知らないのですが、 春学期から今までに行ってきた活動についてお聞かせくださいますか。
(今回は山中工房でのもう一つの専攻である、FMについてははほとんど割愛させて頂きました。しかし現在メディア情報学科2回生に向けての、メディア工房特番がwebラジオで聞けます。
>>>http://www.ksc.kwansei.ac.jp/~yamanaka/kscfm/index.htm

森下:ハワイに行ってそこで暮らしている日系人のヒューマンドキュメンタリーを収めるのが、ハワイでのフィールドワークの活動です。今回は日本から直接ハワイに移り住んだ方々の孫世代、つまり日系3世の方々についてのインタビューを行いました。
日本人が持っているハワイという認識は「楽園・リゾート・癒し」。その気持ちのままでフィールドワークに行くとレジャー感覚で行ってしまいかねないので、春学期はハワイ大学出身の山中教授から、歴史・風土・その他の講義を受けました。

芳本:その時点でのハワイに対するイメージの変化は?

森下:学ぶまでは漠然とした楽園、外国であって外国でない日本の離れ小島というイメージでしたが、ハワイは、しっかりとした歴史を持って形成されてきたんだなと感じました。

芳本:春学期の4ヶ月間は下調べだけだったのでしょうか?

森下:ヒューマンライフヒストリーを収録する上で大切なことは、カメラワークです。
手順を知らなければ、ぶっつけ本番でやってもまともな映像はとれません。
ハワイは遠いので、撮り直しがきかない事もあり、カメラワーク訓練の合宿を6月に、
関西学院の千狩セミナーハウスで合宿を行いました。

芳本:そしていざハワイへ行くわけですね。滞在期間はどれぐらいでしたか?

森下:12泊14日です。9月の始めから中旬までハワイにいました。

芳本:感想は?

森下:一言で言うと、大変でした。大変さとは、ある程度フィールドワークの知識を蓄えて行ったのですが、その知識の中での自分が持っているイメージと、実際自分の目で見たのはやはり異なっていました。
過去のフィールドワークを行った先輩方の資料を基に、シナリオを作成して行ったのですが、なかなかそれ通りにビデオは撮れません。
人を撮るというのは、その方のそのときに置かれた状況が混じってしまうのでやはりシナリオ通りにはいかないのです。

芳本:ライフヒストリーの中には、インタビュー対象者が、他人には話しにくい事もあるということですね。
それを引き出せなかった事もあった。
では、こんな事がよかったというのはありますか?

森下:現在ハワイにいらっしゃる日系人の方々は3世で、4世以降はほとんどが日本語が話すことの出来ない世代になってしまいます。
そして、3世は日本語が分かり、話すことの出来る、最後の日系人世代といわれています。
悲しいことに、ゆくゆくは消えてしまう文化に対して私たちは触れることが出来た。その事が私たちの宝になっていると思います。

芳本:なるほど。では少し話を変えますが、宿泊施設はいかがでしたか?

森下:男子は、現地のお寺に宿泊させていただきました。女子はビーチハウス。ビーチハウスは日本でいうコテージのようなモノです。

芳本:12泊中、ずーっとカメラを回しっぱなしだったのですか?お休みタイムとかはありましたか?

森下:カメラを回さない日はなかったと思います。でも、一日あたりの収録時間は日によって違います。
例えば、ハワイの歴史を撮ろうと思えば自然のショットが必要になります。だから、ちょっと遠くの丘に登ったり滝を撮ったり。そういうときはカメラを回す以上にも移動に時間がかかりました。
最初の5日間はハワイの歴史・気候・風土を撮影するのに時間を充てました。
残り5日でヒューマンライフヒストリーの収録。ここからはクルー制作に入ります。各班に分かれて、担当する日系の方と話し合った上で時間を決定しました。ただし日系3世の方は皆高齢なので、一日に5時間回しっぱなしの撮影等は耐えられません。
そこで平均して3〜4時間、撮影に協力してもらいました。

芳本:それでも、膨大な時間になりますよね。テープ何本ぐらいになりましたか?

森下:一番少ない班で60分テープ6本ぐらいです。

芳本:ということは、60×6=360分。その360分のうち、作品としてつくりあげるヒューマンライフヒストリーは何分ぐらいなのでしょうか。

森下:予定しているのは15分から30分です。

芳本:えーっと、360割る15…。いかに大変かが分かりますね。
さきほどおっしゃっていた、風景とライフヒストリーは同じ番組の中に入るんですよね?

森下:はい。作品の主に9割はヒューマンライフヒストリーで、撮影の対象者の背景として、始めに撮影した風景などを差し込みます。

>>> 次ページへ





森下奈津希 【もりした なつき】


関西学院大学総合政策学部メディア情報学科3回生。 山中速人メディア工房でマルチメディアと社会学について学ぶ。今年の夏休みには、ハワイ在住の日系人のヒューマンドキュメンタリーを収録するために、ハワイに渡る。 現在は、収録した映像を元に番組を作ること、また、これから始まる本格的な就職活動のため、企業研究に勤しんでいる。
所属サークル:望郷 インタビュアー&原稿編集担当