B ク チ コ ミ ・ マ ー ケ テ ィ ン グ の 可 能 性

 

最近の新しいマーケティング手法として「クチコミ」を利用したものがあります。もっともプリミティブなコミュニケーション手段であるはずの口承伝達、つまりクチコミが今さら注目されているのは、昨今のマーケティングのあり方への反省と、現代社会からの要求があったからだと考えられます。

日本語でいうところの「クチコミ」マーケティングは、英語ではViral Marketingと呼ばれています。viralというのは、virusつまりウィルスの形容詞形です。ウィルスが人づてに伝染していくように評判が伝播していくというイメージが、ここにはこめられています。

私たちが生きる現代は、情報化社会と言われているように(しかもその言葉にすら食傷気味であるくらい)情報が溢れ返っています。情報が役に立つための情報であってほしい、と誰もが考えるのは当然のことでしょう。しかしテレビなどマスメディアを媒介して我々のもとにやってくる様々な情報、特に広告は私たちをしばしば混乱させ、最後には私たちを途方にくれさせます。インターネットなど便利なメディアが登場すればなおさらで、私たちは「より良い情報」を求めるあまり終わりのないブラウジングを続ける羽目に陥っています。

一方で、マスメディアを使った宣伝活動からでは使用者の実感が伝わってこないという問題があります。いわゆる素人っぽい人が出演しているCMというのはあります。彼らはその商品がどんなにすばらしいかを説いているわけですが、どうも「やらせ」臭い。消費者が何かものを選び取るには相応の決め手が必要で、それは多分消費者と同じ立場の人の意見なのです。その「意見」への欲求と商売っ気が合致したのが「クチコミ・マーケティング」であると言えます。

またインターネット上でもこの「クチコミ」に似たコミュニティが出現しています。それは「2ちゃんねる」という巨大掲示板サイトです。このサイトについてはもうすでに様々な議論がなされているのでここでは省略しますが、2ちゃんねるの最大の特徴は、匿名で書き込めるために個人が文責を負わないということです。互いの素性を知らず、人と人の関わりも流動的なインターネット上で、匿名という形により不完全ながら自由な議論の場を2ちゃんねるは提供しました。この2ちゃんねるがネットコミュニティのひとつのあり方とまで言えるほど巨大化したのは、 「情報の海」であるネット社会においてもやはり人々の「クチコミ」に対する渇望があったからではないでしょうか。

 

<< 戻る @ A B C D E F 次へ >>