E 「 コ コ ロ ザ シ 」 と 「 タ ク ラ ミ 」

 

@章でも書いたように、最近のマーケティング事情は、モノの飽和が原因でほかとのわずかな差別を強調するあまり、すっかり記号論化してしまっている状態です。つまり、宣伝だけで成立している商品で溢れかえってしまったのです。これは逆に言えば、どんなにくだらないものを企業がこしらえても、宣伝しだいでいかようにもなると思われている風潮だと言うことです。

日本の広告業について対談集『ブランド』で、著者の岡と吉田がそのことを指摘しています。確かに短期的な視点で見れば、ヒットしてもしかしたら広告界の賞を受賞するような話題性のある広告をつくることはできます。しかし、長期的な「ココロザシ」、つまり企業や商品が社会の中でのポジションをどう持つかという長期的なビジョンを欠いたものが蔓延しがちになっている、と。

多くの企業者は短期的なインパクトを求めるあまり、ポリシーのない欲張りな戦略を立ててしまいがちです。それは自らの目標に目先の成功しかないからなのかもしれません。「タクラミ」はすぐそこの成功を勝ち取るためだけには有効かもしれませんが、それでは長期的な社会の信用を得ることはできないし、将来の保証などあるはずもありません。私たちが持続可能な消費生活を(必ずしも環境問題に限らず)続けるために必要なのは、タクラミなんかではありません。自分が社会のなかでどうありたいかという点についてかなり長期的な視点にたち、つまり「ココロザシ」を持ち、しかもそれが今すぐ実践するということが必要なのです。それは崇高な目標なんかではなく、いまこれからあなたがとる次の些細なアクションのことです。

参考文献:『ブランド』岡康道・吉田望、宣伝会議

 

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