障害の種類と支援方法
◆障害の定義について
なお、この障害者基本法は2004年に改定され、第3条第3項に「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」と書き加えられました。したがって、障がい者の方の「学ぶ権利」を不法に犯してはならないことになります。
一方、現実の世界では“障害”の定義は思ったより複雑です。
例えば、聴覚障害を例に取りあげると、医学的には音圧の単位(dB、デシベル)で表示します。つまり、0〜30dB(デシベル)の音が聞こえる方は聴者(健常者)、30〜50dBの方を軽度難聴者、50〜70dBの方を中度難聴者、70〜100dBの方を高度難聴者、そして100dB以上の方をろう者に分けます。
それでは、法的なレベルではどうでしょうか? 身体障害者福祉法で両耳の聴力が100dBの方の障害等級を2級、両耳の聴力レベルが90dB以上の方を3級、「両耳の聴力レベルが80dB以上であるか、両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50%以下」の方を4級などと分けています。このように、現実の社会では、どこでボーダーを引くか“線引き”が必要なのです。
また、文化的視点から、ろう者の社会(デフ・コミュニティ)では手話をベースとした独自の文化(ろう文化)が存在するという主張もあります。こうした様々な背景を理解しないと、本当の意味での“人と人との共生”は実現しません。
さて、 「総合政策の視点から学習支援を考える」のページでも触れましたが、“障害”について自然科学(生物学)のレベルで定義するか、それとも応用科学(医学)のレベル、あるいは法的レベルで考えるか? さらには人権等の倫理的なレベルがふさわしいか? それぞれの立場で異なるかもしれません。そして、障害がある方々は、その狭間で苦しんでいるかもしれないのです。
◆大学における学習支援の対象としての分類、
および整備しなければならないこと
大学での学習支援の対象としては、障害を以下の5つに分けるのが普通かと思います(日本学生支援機構のHPも参照)。(1)視覚、(2)聴覚・言語、(3)肢体不自由、(4)病弱(内部疾患等)、(5) 発達障害、その他 。もちろん、こうした分類からさらに個人別に障害の程度に応じて、きめ細かな対応をしなければいけません。
以下は、日本学生支援機構が推奨する各種支援のリストをベースに作成した支援方法の表です。なお、●はレベル1(最低限、整備が必要)、○はレベル2(標準)、△はレベル3(整備が望ましい。あるいは、状況によって整備が必要)。
視覚 | 聴覚・言語 | 肢体不自由 | 病弱 (内部疾患等) |
発達障害他 | |
入試 | ●問題点訳(全盲) | ●注意事項等伝達 | ●時間延長・別室受験 | △時間延長・別室受験 | |
●解答墨訳(全盲) | △手話通訳 | △代筆者配置 | |||
●問題の拡大(弱視) | △英語リスニング試験等の特別措置 | ||||
●時間延長・別室受験 | |||||
大講義 | ●教材点訳(全盲) | ●ノートテイク | ●教室階数配慮 | △定期検診・通院配慮 | △テキストデータ化 |
●教材の拡大(弱視) | ●座席配慮 | △PC持込許可 | △サポート | ||
●講義録音 | ●ビデオ教材字幕付 | ●PC持込許可 | △講義の録音 | ||
●座席配置 | △手話通訳 | ○ノートテイク | |||
●PC持込許可 | △代筆 | ||||
○リーディングサービス | |||||
○ノートテイク(板書) | |||||
△ガイドヘルプ | |||||
少講義(ゼミ等) | ●教材点訳(全盲) | ●ノートテイク | ●座席配慮 | △定期検診・通院配慮 | △テキストデータ化 |
●教材拡大(弱視) | ●座席配慮 | ●PC持込許可 | △PCの持込許可 | △サポート | |
●講義録音 | ●ビデオ教材字幕付 | ○ノートテイク | △講義録音 | ||
●座席配置 | △手話通訳 | △代筆 | |||
●PC持込許可 | |||||
○リーディングサービス | |||||
○ノートテイク(板書) | |||||
△ガイドヘルプ | |||||
演習・実技 | ●体育実技配慮 | △サポート | |||
●語学特別クラス設置・代替措置 | △代筆 | ||||
インターンシップ等 | ●受け入れマニュアル整備 | ||||
定期試験 | ●問題の点訳(全盲) | ●注意事項等文書伝達 | ●時間延長・別室受験 | △解答方法配慮 | |
●解答の墨訳(全盲) | ●解答方法配慮 | ||||
●問題の拡大(弱視) | △代筆 | ||||
●時間延長・別室受験 | |||||
●解答方法配慮 | |||||
学内生活(移動等) | ●Webページへの配慮 | △学内生活介助・支援 | |||
△ガイドヘルプ | |||||
安全対策 | ●非常時マニュアル | ||||
就職支援 | ●個別相談会 | ||||
その他 | ●支援スタッフの養成講座 | ||||
●授業・試験体験聴取 | |||||
●合格後の相談 | |||||
△独自奨学金 | |||||
△補助金等申請 | |||||
△住居紹介・斡旋 |